小川 紘一 著
市場撤退を繰り返し、長らく停滞してきた日本の製造業をはじめとする産業の再生の方途はあるのか?アップル、サムスン、インテル、クアルコム。これらの企業は利益を生み出すコア領域をクローズにする一方で市場との境界にオープン領域を設定し、多くの企業を巻き込み、ビジネスのエコシステムを実現しています。
こうした企業の成功要因と競争優位性の分析と関係者への綿密な調査により、本書では、(1)コア領域をクローズにし、企業と市場の境界領域をオープンにする知財マネジメント(2)新興国企業との連携とASEAN市場での「適地良品」づくり(3)ソフトウェアリッチ化による次世代型製造業モデルを提唱する。
欧米企業が生み出した周到な知財マネジメントとビジネスモデルの構造を分析し、長年の実証研究に基づく成果から、日本企業の本質的な課題を克服し、再び活力を与え、再成長のための戦略を提起する労作です。
第1章 エレクトロニクス産業の失敗を超えて
製造業のグローバライゼーション
ソフトウェアリッチ型への転換
技術だけではもはや戦えない
知的財産立国が機能しない
かつて世界を主導したDVD、液晶パネルを筆頭に市場撤退が繰り返された
リチウムイオン電池も太陽電池も衰退パターンは同じ
韓国・台湾・中国企業の躍進の理由は「ソフトウェアリッチ型製品の興隆」
CD-ROMの技術構造の変化と競争ルールの変化
テレビの技術構造の変化と競争ルールの変化
80年代の視点からアップルを捉えてはならない
日本の製造業に見る研究開発の投資効率
第2章 製造業のグローバライゼーション
瞬時に国境を越える技術、人、ものづくり
製品アーキテクチャと伝播スピード
コア領域とオープン領域の境界を事前設計せよ
製造業のグローバライゼーションと日本企業
製造業の第三の構造転換
コンピュータ産業からはじまった第三の構造転換
マイクロプロセッサによるソフトウェアリッチ型への転換
組み込みソフトウェアの巨大化とプログラミング言語の進化
経営者の「見える手」から「伸びゆく手」へ
ビジネス・エコシステムとグローバル分業
グローバライゼーション時代の競争優位戦略
新たな競争優位戦略としてのオープン&クローズ
企業収益を支え、雇用と経済成長を支える伸びゆく手
80年代のアメリカが強行した政策イノベーション
80年代のアメリカにみる知的財産政策のイノベーション
第3章 欧米企業が完成させた「伸びゆく手」のイノベーション
ソフトウェアリッチな製造業の興隆
3つのソフトウェアリッチ
デジタルな編集設計によるものづくり
100億台の機器につながる時代のビジネスと企業と国のあり方とは
シスコシステムズの伸びゆく手
インターネットルーターで展開したオープン&クローズ戦略
シスコシステムズが得たオープン環境の覇権と知的財産マネジメント
欧州デジタル携帯電話市場のオープン&クローズ戦略
Wi-Fiが持つ携帯電話市場での破壊的意味
ノキアの苦悩とその背景
携帯電話に刷り込まれたクアルコムの伸びゆく手
クアルコムのオープン&クローズ戦略
クアルコムの伸びゆく手
クアルコムは新興国市場を狙う
製造業のサービス化がはじまる
個人が主役のサービス産業が世界の隅々に生まれる
匠よりビジネスモデル型軍師の養成を
iPhoneに刷り込まれたアップルの伸びゆく手
アップルiPodが生まれる前の日本企業と韓国企業
ジョブズの提案を断ったソニー
アメリカ音楽業界が直面した深刻な事態とジョブズの対応
なぜアップルに付加価値が集中したのか
アップルの収益のメカニズム
アップルが守るコア領域
iOSの構造と組み込みソフトウェア
先進国型製造業としてのアップルによる雇用への貢献
パソコン産業に刷り込まれたインテルの伸びゆく手
アンディ・グローブの仕掛けた転換戦略
PCIバスを介した第一の伸びゆく手
グローバル市場へ向かうインテルの伸びゆく手
マザーボードを介した第二の伸びゆく手
インテルの知的財産マネジメントと契約マネジメント
インテルの伸びゆく手はスーパーコンピュータの市場でも形成される
第4章 アジア諸国の政策イノベーション
90年代から競争政策を一変させたアジア諸国
70年代から90年代の日本とアメリカ
アジア諸国の政策が機能する産業領域と機能しない産業領域
半導体産業とトータル・ビジネスコストの政策
減価償却費が鍵だった
政策イノベーションで勝った台湾
トータル・ビジネスコストという競争思想と先進国企業の知的財産への対応
トータル・ビジネスコストの3要素
CD-ROM、DVD-ROMのトータル・ビジネスコスト
インセンティブ制度および為替と価格構造
知的財産の考え方の変化とクロスライセンス
クロスライセンスは新興国の戦略ツール
クロスライセンスとオープン&クローズ戦略
アップル対サムスンの知的財産訴訟の本質
第5章 アジア市場での経営イノベーション
日本の勝ちパターンはアジアにあった
適地良品・適地適価
三菱化学の伸びゆく手
DVDディスクに象徴されるプロセス型製品のものづくり
既存の組織文化からの脱皮
IBMと三菱化学に学ぶ変革のためのマネジメント
新興国の成長と共に歩むトヨタのIMV
プリウスの開発経緯
IMVは適地良品の「いいクルマ」
かつては販売のトヨタ
販売からものづくりイノベーションへ
IMV開発に見る「適地良品」の設計思想
ASEAN型モデル
IMVの経営イノベーション
適地良品の商品設計に向けた取り組み
適地良品は品質の妥協ではない
ダイハツとの協業でトヨタが学んだこと
IMVに見る日本国家のマザー機能
IMVシリーズの新興国への出荷が始まる
IMVに見る日本企業のASEAN型モデルとその意義
次世代IMVの行方
日本企業が先進国型製造業として進化し続けるための方向性
製造業のグローバライゼーションに適応する組織能力の育成
トヨタの組織改革
先進国型製造業としての日本企業の持続的な成長に向けて
第6章 オープン&クローズ戦略に基づいた知的財産マネジメント-我が国製造業の再生に向けて-
オープン&クローズ思想を必要とする時代背景と日本
雇用創出につながらなかった技術イノベーション
ビジネスモデルを再構築せよ
オープン&クローズ戦略に基づいた知的財産マネジメント
オープン&クローズ戦略による製造業復活の処方箋
毒まんじゅうモデル
フロントランナー型事業とキャッチアップ型事業の知的財産の公理
新たな知的財産マネジメントを担う人材の育成
おわりに
2020年の日本
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発生刷 | ページ数 | 書籍改訂刷 | 電子書籍訂正 | 内容 | 登録日 | ||||
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1刷 | 006 5行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 019 【注】の2行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 068 見出しから7行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 068 左から1行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 069 左から4行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 069 9行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 070 左から4行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 079 見出しから4行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 086 左から2行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 087 左から1行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 186 1行目 |
未 | 未 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 186 9行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 232 見出しの5行前 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 233 8行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 260 見出しから8行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 260 9行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 276 左から2行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 290 3行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 308 1行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 350 左から8行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 370 1行目 |
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2015.02.02 | ||||
1刷 | 375 「第4章」の1行目 |
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2015.02.02 |
はるわか さん
2017-06-30
製品設計にマイクロプロセッサと組み込みソフトが深く関わる、モジュラー型に転換された製品アーキテクチャが作り出す技術の伝播・着床スピードの違いが、ビジネスエコシステム(比較優位の国際分業)を大規模に出現させた。欧米企業は自社のコアとなる技術領域と(他社技術をつなぐ)インタフェース領域に知的財産を張り巡らせ、他社へ大きな影響力を持たせる仕組みをつくり、新興国企業に強い影響力を行使しながら、それらの成長を自社の成長へ取り込んだ。毒まんじゅうモデル。インテル、アップル、クアルコム、三菱化学。
中島直人 さん
2015-03-23
日本の電機製品を中心とする製造業の凋落は事業戦略の失敗が原因。100年に1度の転換期にある今、企業が生き残るには、コア技術の死守と新興国企業の活力を取り込む、オープン&クローズ戦略が必須となっている。もう少し簡潔に纏めて欲しいとの希望はあるが、今まで解決出来なかった点をかなりクリアにしてくれ、勉強になった。
g.t さん
2021-09-24
2020年代の製造業の在り方を考える1冊。欧米企業のビジネス戦略は特に電子機器領域や自動車分野で特筆。制度を作っていく戦略。またアジア各国は法制による税制特典でビジネス構造を変える。このような状況下で日本企業はどのように戦っていくか考えないといけない。クロスライセンスによる技術の輸出、適地適作の考え方、パテント面でのオープン領域とクローズ領域の設定。特にソフトウェア産業の考え方を組み込んでいく事が必要か。