20年前、翔泳社に入って配属された先は『DDJ日本版』の広告営業。会社のフラグシップではありましたが、万年赤字のプログラミング雑誌でした。雑誌を売るには、部署を超えた新しいネタ探しによる、新しい読者の獲得が必要と感じ、一番初めに著者になっていただいたのが『憂鬱なプログラマのためのオブジェクト指向開発講座―C++による実践的ソフトウェア構築入門』の著者となる、Tucker!さんでした。
プログラミングのことはまったく門外漢である私にもわかりやすいTucker!さんのエントリーは、(当時の)Nifty-Serveのオブジェクト指向会議室の中でとても光って見えました(笑。
早速、編集部に紹介したところ、編集部とも意気投合し、『DDJ日本版』で連載が始まりました。編集部に宝物を差し出した寂しさもありましたが、わけもわからないながらにやってきた中で自分の提案が通り、Tucker!さんが、別の世界にデビューしていくさまを見て、とても嬉しかったことを昨日のことのように覚えています。その後、単行本になり、おかげ様で1998年5月刊行後、今なお増刷を続けるロングテールな本になりました。
その後、たくさんの人との出会いの中で「どんな人でもその人だけが語れるストーリーがある。その中で、書くほどのネタと情熱がある人が、書籍を出しているのだ」と思うようになりました。
その人だけの物語に対峙した時、私は心の底から感動し、人間に生まれてきてよかったと思い直すとともに、たくさんの人にこの物語を聞いて欲しい、読んで欲しい、そのためには、イベント、オンラインメディア、書籍、をどんな形で組み合わせたらいいかも考えるようになりました。
やはり、メディアが違うと、対象や与えるインパクトがぜんぜん違うこともその後体験したからです。当たったり外れたりを繰り返しながら、プロデュースすることが仕事の醍醐味だと思うようになりました。
逆に言うと、一人で情報を発信できる時代だからこそ、書き手が出版社と組むメリットは、思いを世の中に最大化して届けるというゴールに向かって編集者と共に歩めることと、自分が持つチャネル以外で出版社がどれだけ拡声できるか?ということになるかと思います。
だれでもblogやSNSで情報発信をできる時代だからこそ、情熱とネタを持っている人は、自分の言葉を第三者と(つまり編集者と)思いや知恵をパッケージ化し、どこまで言葉が世界に届くか試して頂きたいと思っています。
2013年、翔泳社で書きたい方、講演したい方、また、翔泳社でメディアをプロデュースしたい若人!あなたのAction!をお待ちしてます!
いわきり