我が家には、小学4年生の息子と幼稚園(年中組)の娘がおります。
最近は兄妹で「スパイごっこ」なるものが流行っているらしく、キーボード、水鉄砲などを収めたケースを片手に、狭い家の中を走り回っています(たぶん最近レンタルして見た映画『Mr.イン●●ディブル』の影響なんでしょうが……)。
あるとき「お父さん、難しそうな本ちょうだい!」と以前編集した黒い装丁の本を持ってきました。ケースに入れるスパイ用のアイテムを集めていたようです。スパイアイテムをケースに入れる時にとても盛り上がるらしく、「ケースの開封の儀」では、キーボードをジャカジャカと叩く娘と、銃を片手に黒い本をケースに入れる息子が、奇声を発しながら騒いでおりました。
休日ともなると子どもと一緒に遊ぶことが多いのですが、遊びの中から書籍の企画のヒントをもらうこともたびたびあります。もう数年前になりますが、子どもと一緒にお絵かきをしていた時に生まれた書籍企画のエピソードをお話しします。
我が家の子どもはお絵かきがとにかく好きで、折り紙の裏に色鉛筆で絵を書いて、それを犬や猫の形に折っていました。どんどん作っていくと当然かなりの数が出来上がっていきます。床一面にちらばることもしばしば。
「捨てると嫌がるし、困ったなぁ」と思っていると、子どもが自分で折り紙をその辺にあったノートにペタペタ貼るようになりました。「面白いでしょ?」と満面の笑顔で見せてもらったノートには、色とりどりの折り紙とどこから持ってきたのか家族みんなで撮った写真もペタリ。「へ~、これいいねぇ!」と妻も感心するほど(子どもなので、貼り方はテキトーなんですが)。
ちょうど写真を中心とした書籍の企画を考えていたので、「これは面白い」と、家族の写真と手作りのものを組み合わせることで書籍ができないかとインターネットで情報を集めました。そして「スクラップブッキング」というものに出会いました。
スクラップブッキングとは、自分の好きな写真をデコレーションして作るもので、アメリカで生まれたペーパークラフトです。日本でもじわじわ作る人が増え、サークルも多いそうです。
企画を立てる前にいろいろな作家さんに「どういったきっかけで作り始めたのですか?」とメールなどで聞いてまわったところ、一番多く寄せられたコメントは「家族の思い出を形に残したい」でした。
大事な家族の写真を形として残したい、そんな人が増えているということがわかり、『Happy Scrapbooking』を企画しました。
スクラップブッキングには「これが正解」というものはないのですが、子どものように自由な発想で「楽しく作っているなぁ」と感じる作品はどれも魅力的でした。書籍ではそういった作家さんを中心にお声がけさせていただきました。
これまで作ってきた書籍の中で作家さんとお話する機会が多かった本のひとつでもあるのですが、みなさん本当に子どもと写真を撮るのが好きで、そして何より思い出の写真をデコレーションすることが大好きな方ばかり。デコレーションのこだわりや作品の独創性もすばらしいものばかりでした。
今、書籍を開いて作家さんの作品を改めて見ると、作家さんの子どもとの思い出がきらきら光っているのが感じられます。デジタル全盛でもこうした形に残すことって「いいなぁ」とあらためて思います。
昔、子どもとの遊びの中で生まれた、今でも心に残る書籍のお話でした。
みやこし