今年ももう師走になりました。この時期になると、書店ではカレンダーや手帳など、来年向けの季節商品が並びます。季節商品といえば、「年賀状書籍」もその1つ。いろんなデザインの年賀状が紙面に並んでいて、CD-ROMにそのデータやソフトが収録されているというあれです。
翔泳社も毎年、年賀状書籍を刊行していますが、翔泳社の年賀状書籍は1998年(寅年)にスタートし、以来17年、ラインナップを変えながら続いているご長寿シリーズです。今回はその年賀状書籍について、入社3年目&年賀状書籍3年目の編集Mが、先輩から聞いた話も交えながら、その歴史ある舞台裏をご紹介します。
毎年こんなふうに作っています
年賀状書籍の制作は編集部の一大プロジェクト。年賀状書籍は複数人体制で制作が進められます。年が明けて早くも2月には翌年向けの年賀状編集部のメンバーが決まり、年賀状編集部を「卒業」する前任者から、次の担当者に引き継ぎが行われ、制作がスタートします。最近は年賀状書籍が編集部新人のブートキャンプ(新兵訓練場)にもなっているとか。
ふだん担当しているPC書とは異なり、巻頭特集やおまけなどの企画を盛り込めるのも年賀状書籍の特徴で、ここがいちばんの工夫のしどころです。
念入りに書店を見て回って、実用書、ホビー雑誌、ファッション雑誌、子育て雑誌、生活雑誌などを手当たり次第に見比べながら、今こんなテイストが流行っているとか、こういう特集はどうかとか、あれこれ話し合って企画を固めます。過去にはお正月休みに取り組める手作りはんこや紙工作を特集にしたり、キャラクターもので丸々1冊の年賀状書籍にしたことも。
12年前の年賀状書籍を開いたら「電子メールde年賀状」というタイトルで10ページ以上の特集がありました。時代を感じますね……。
主役の年賀状素材は、毎年微妙にデザインのテイストや傾向が変わっているのが面白いです。たとえばデジカメフレームだと、以前はキラキラした派手めデザインが主流だったのが、最近はちょっと落ち着いた大人な印象のものが増えていたり、時代の変遷が感じられます。
カタログ紙面も素材に合わせて毎年微妙にテイストを変えつつ、周りの飾りが素材よりも目立たないように、かといって無味乾燥にならないようにデザインしてもらっています。
表紙や紙面の編集作業に加えて、付属CD-ROMの検証も重要です。ご長寿シリーズゆえに、毎年リピートしてくださる読者のPC環境も、10年以上前のWindows 98SEやMeから新しいWindows 8までさまざまです。
毎年、倉庫から検証用の古いプリンターやPCを引っ張り出して、手分けをしてソフトの動作確認をしています。昔はチェック漏れのまま進んでしまい、ソフトが動かなくて大変な目にあったという怖い話も……。
そして例年、お盆前後には制作が佳境に突入し、年賀状担当者の机周りは表紙やら紙面やら素材見本やらで紙だらけに……。真夏の日差しを浴びながら、まだ今年は何か月も残っているのに翌年の干支や年号を見まくるので、年賀状担当者は今が何年なのか分からなるようです(笑)。
そんなこんなで何とか入稿し、9月に最終チェックをして、めでたく制作完了となるのでした(じつはその後も特設Webサイトなどをまとめる作業があるので、いつも気が付くと10月の発売日になっているというパターンだったり……)。
発売後のお楽しみ
書籍発売後は、メールや電話での読者質問対応などはありますが、基本的には営業部にバトンタッチなので、年賀状編集部としてはいちばん落ち着ける時期だったりします。今も毎週営業から現場の情報を聞きながら、自分でも書店の年賀状コーナーを見に行ったりして、売れてるかなーいい場所に置かれてるかなーとチェックしています。
また、プレゼント応募&アンケートハガキで、読者からの感想をダイレクトに知ることができるのも年賀状書籍ならではの楽しみです。
毎日1センチくらいの厚さの束になってハガキが届いていますが、下は小学生(!)から上は80代の方まで、幅広い読者から、ここが良かった、次はこれを入れてほしい、などなど感想をいただいています(中には蛍光ペンやシールなどで丁寧に飾られたハガキもあったり)。こうした反響をもとに、次回の年賀状書籍の制作に生かしています。
2014年のラインアップはこの4紙です。
と、年賀状書籍の販売期間は毎年10月~年明けまでのわずか3か月間ですが、その裏にはこのように半年以上に及ぶ血と汗と涙の(?)制作期間と、それを毎年続けてきた歴史があるのでした。そうこうしているうちに年が明け、また2月になり、翌年向けの制作が始まるのです……。
来年の年賀状はこれから作る、というみなさんは、ぜひとも翔泳社の年賀状書籍をお手に取っていただければ……!
もろはし