■ 子供から大人までマンガを描く時代
いまや日本だけでなく世界に広まりつつあるマンガ文化。みなさんの中にも、読むだけでは飽き足らずに、自分でマンガを描いてみたり、将来の夢がマンガ家だったという人もいると思いますが、いま、マンガを描く人はどんどん増えています。
マンガを描く人というと、出版社に持ち込みをしたりマンガ賞に投稿したりするような、本気でプロを目指す志望者だけをイメージするかもしれません。
でもいまは、コミケのようなマンガ同人誌即売会や、ネット上でイラストやマンガを簡単に公開できるサービスが増えて、従来のプロ志望者に限らずセミプロやアマチュアなどさまざまな人たちがマンガを描いて発表できるようになっています。
少し前にも、小学生向けのマンガ雑誌で本格的なマンガ入門セットが付録になって、話題になりました。書店でもマンガ技法書の棚は少しずつ増えてきています。そんなふうにマンガを描く人たちの裾野がどんどん広がっているいまの時代は、1億総マンガ描き時代と言っていいのかもしれません。
■ マンガを描く人の悩み「ストーリーが作れない」を解決!
かくいう私も趣味でマンガを描いている1人だったりするのですが、マンガを描く人に共通する悩みとして、「ストーリーが作れない」というものがあります。
絵が描けるならマンガなんて簡単でしょ、と思うことなかれ。1枚もののイラストは描けても、マンガを作ろうとなるとそもそもお話が思いつかなかったり、冒頭だけで後が続かなかったり、最後まで何の盛り上がりもないお話になったり……。
絵は練習を繰り返すことで上手くなっても、ストーリーは練習方法も作り方も、なかなかこれといったものがなく難しいのです。
そんなとき、趣味で参加していたとある同人誌即売会で、マンガの作り方の出張講義をやっているのを見つけました。その講師が、『キャラクターを動かす!マンガストーリー講座』(2014年3月刊行)の著者、田中裕久さんです。
田中さんは東高円寺でマンガ教室を運営している方で、そのほかにも同人誌即売会や高校(!)などでマンガ制作の出張講座を行っています。
20代のころは大学院の博士課程まで進んで俳句の研究をし、そこから転身してマンガ教育に携わるようになったという異色の経歴の持ち主ですが、マンガ教育にかける情熱はかなりのもの。
日々、マンガのことを考えていて、教室の生徒さんとのやり取りをもとに、その理論も手法もブラッシュアップさせていく熱い方です。教室で教えている内容を書籍化したいということで、たまたまその出張講義で知り合ったのをきっかけに、企画が立ち上がりました。
■ 初心者でもどんなジャンルでも使えるノウハウ本
本書は「キャラクターを動かす!」の書名通り、ストーリー作りの本ながらも、キャラクター作りにかなりのページを割いて解説しているのが特徴です。
マンガは特にそうですが、映画でも小説でも、エンターテインメントには魅力的なキャラクターが不可欠。そこで本書もキャラクターをしっかり作り込むところから始めて、そこから企画、プロット、演出と段階を追ってストーリー作りの手法を解説していきます。
随所に掲載されている作例が多種多様なのも本書の特徴です。マンガ教室の生徒さんたちは10代から40代まで老若男女が揃っていて、絵柄も作風もバリエーション豊か。
本書の作例も教室の生徒さんたちにご協力いただいて、熱いバトルものの少年マンガ、きれいな絵柄で恋愛ものの少女マンガ、サブカルっぽい雰囲気の青年マンガなど、非常にバラエティに富んでいるので、どんなジャンルのマンガでも使える1冊になっています。
全4章・16レッスンを通じてストーリー作りのポイントをしっかり解説する濃い内容ですが、「8割はパターンで作れる」という方針のもと、どんな初心者でもストーリーの組み立て方がパターンでわかるような内容になっています。
各レッスンの冒頭には、マンガを描いたことのある人なら思わず「あるある」と言ってしまうような小ネタマンガが載っているのも楽しいところ。
本気のマンガ家志望者の方も、じつは趣味でマンガを描いてるんだけどという方も、ぜひ手に取ってみてください。
もろはし