こんな入試問題があることを知っていますか?|翔泳社の本
  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. こんな入試問題があることを知っていますか?

こんな入試問題があることを知っていますか? 2014.07.03

 『慶應小論文で鍛えるロジカルシンキング』は、小論文試験の中でも最難関とされる慶應大学の経済学部・商学部の入試問題をベースに、ビジネスパーソンに必要な経済学的思考とロジカルシンキングを身に付けようというものです。実は、慶應大学の入試科目には「国語(現代文、古文、漢文)」はなく、多くの受験生は小論文入試を受けています。

 小論文試験というのは、簡単にいうと現代文よりも長い課題文を読み、問われた内容について100字〜800字で解答するものです。

 たとえば、2008年の経済学部入試問題では、ユニークな展示で有名な北海道の旭山動物園の取り組みを紹介した課題文と、以下のような設問が出題されました。

ある市には動物園がまだありません。そこで市立動物園を新設することを検討しています。あなたがこの市の職員だとして、市立動物園解説について市民が賛成してくれるように訴える文章を書くことになりました。課題文のみに囚われず、あなたの考える根拠も含めて、行政側から市民を説得する文章を300字以内で書きなさい。

 解答例は本書を読んで頂きたいのですが、「みなさん、わが市にも動物園をつくりましょう。観光資源にもなるので、経済が活性化します〜」などという単純な解答ではほとんど得点になりません。自分で問題設定をして、説得力のある文章を論理的に書かないといけないのです。

 その他、以下のようなユニークな問題が出題されています。

  • 「コースの定理」を用いて旅客機が全面禁煙となっている理由を説明せよ
  • 中学校教諭の給与を年功制から能力給に変えたときの影響を論じよ
  • 「食料自給率を高めましょう」が掛け声倒れにおわる理由を説明せよ

 本書では、これらの問題に使われている経済学的概念の背景や、ロジカルに解答を導くための方法を丁寧に解説しています。

 慶應大学が国語ではなく、この試験形態にこだわる理由はなんでしょうか?著者は、本書でこう分析しています。

論理的思考と教養を伴った経済学的思考なしには、企画・研究・開発をリードするような問題解決型思考ができる人材は育ちません。そういう人材を育てるのが大学の使命である…。小論文入試を重視する慶應大学には、そうした志を感じます。

 経済がグローバル化するなかで価値観の異なる人々と仕事をするには、「なぜこれをする必要があるのか」を論理的に説明できなければいけません。また、複雑化する社会問題を分析したり世界経済の動向を見通すためには経済学的思考は不可欠です。

 慶應大学の建学の精神である「実学」、そして実業界で活躍する人材を多く輩出している事実を考えれば、入試問題自体が未来のビジネスリーダーへのメッセージといえるのではないでしょうか。

 本書の目的はロジカルシンキングと経済学的思考を身に付けることにありますが、入試問題を通して慶應大学を分析するという視点で読んでも面白いかもしれません。

こん