年賀状づくりの風景に歴史あり|翔泳社の本
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年賀状づくりの風景に歴史あり 2014.11.07

 手元に古本屋で手に入れた雑誌『太陽』があります。1979年12月号、特集は「年賀状図案500集」。

 「猿づくし」として(1980年の干支は申)、埴輪、絵巻、水墨画、工芸品、郷土玩具、サル山の写真、猿という文字の楷書・行書・草書をはじめとする書、などなどが満載の1冊です。

 もちろん当時はパソコンなんてありません。コピー&ペーストが登場する前の時代です。読者は掲載されている絵や文字を脳内コピー&脳内変換して、絵を描いたり、文字を書いたり、おイモを彫ったりと、まさに図“案”として活用したのでしょう。

 この時の『太陽』の編集長は嵐山光三郎さんで、「この特集が大当たり。それはもうメチャクチャよく売れたのでR」ということをどこかでお書きになっていました。その後何年も続いた大ヒット企画だったようです。(余談ですが、この号の「マンガ猿100匹」という企画がすごい。手塚治虫、石森章太郎、永井豪、松本零士、赤塚不二夫、東海林さだお、わたなべまさこ……。そうそうたるメンツが猿を描いています!)

 時代は下って1987年。この年、プリントゴッコが年間販売数のピークを迎えたそうです。1枚1枚手描きなんて無理無理!ということで年賀状はプリントゴッコで印刷するのが一般化したのです。ただし、印刷と言っても感覚的には版画に近く、1枚1枚ぺったんぺったんとインクで刷っていたまだまだ素朴な時代です。

 さらに下って1995年。パソコンで年賀状を作る時代が幕を明けます。翔泳社はこのテーマに1998年版から参戦したのですが、一般家庭にパソコンやプリンタ、デジカメが普及するのと合わせて、これがまぁ本当によく売れました。

 インク代が少々かかるものの、写真を使ったキレイな年賀状が自宅でどんどん量産できるだけでなく、1回入力してしまえば宛名面も毎年ボタンひとつで完了!というお手軽さで、あっという間にパソコンが年賀状作りの主役となったのです。

 そして2015年。自宅でパソコンを起動するのも億劫になってきた今日このごろ。新しいスタイルが登場しました。そうです、今度はスマホで作るんです!

 スマホ(タブレットも)なら、電源を入れて起動を待つ手間もなく、いつでもどこでも年賀状が作れます。CD-ROMではなくダウンロードでとり込むので読み取りのエラーも起こりません。無線でプリンタにデータを飛ばして今まで通り印刷することもできますし、インク代が気になったり、元旦は明日!、というときはメールやSNSで年賀状を出すこともできます。

 操作はすべて指でのタップなので、お絵かき気分で作れるのも、スマホアプリの楽しい点です。この楽しさは動画でぜひ。

 いまや年賀状すらネット送信する時代になりました。でも、形がどんなに変わっても、年賀状は日本のお正月に欠かせない大切な風物詩。昔から日本人は年賀状が大好きなんですね。

うすい

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