歳がばれますが、かろうじてセンター試験世代です。四半世紀ほど前に受験したそれは第2回だか第3回だったように思います。
今と違い、当時の数学は「数学I」「数学II」の2科目でした。両方とも確か100点満点。で、私の結果はというとどちらも50点前後だったため、担任の先生と一緒に青くなるどころか白くなって、慌てて願書を出す先を変えたのを覚えています。足切り、怖かったわー。
理科にいたっては物理が壊滅的にダメ、化学は実験レポートと化学式を覚えるのが面倒でどうにも好きになれず、生物はキライな生き物の写真が教科書に載っていたので最初からパスし、志望校の選択肢が少なくなるのを承知で、消去法で地学を選択しました。
それくらい理系科目が苦手でキライな、ど文系な編集者です。
そんな文系編集者でも、「理系」の本を担当することがあります。お仕事ですから、理系・文系、得意・不得意に関係なく、良書を世に出すべくいろいろと調査してがんばります。
そんな中、「担当するなら、読者さんと一緒に自分も勉強できる本がいいなあ」「編集しながらこの歳になっても勉強できるって、とってもお得じゃない?」と思って企画したのが、本書『文系でもわかる電気回路』です。
今の時代、文系出身者だって必要に迫られて電気系や電気通信系の資格を取らなきゃいけないことがあるでしょうし、理系出身者だって社会人になって数年も経てば、電気の基礎知識なんて結構忘れていることもあるでしょう。
本書は、そんな、はじめて電気回路を学ぶ方や本格的に勉強する前段階の方を対象に、専門書を読む前の準備体操として読むのにちょうど良い内容になっています。
文系勝手代表の編集者として私が著者の山下明さんにお願いしたのが、「式をあまり使わず、文系出身者でもわかるような言葉で説明してください。」ということでした。文系には、公式アレルギーという持病を持つ人が多いからです。そう、式が出てきた瞬間に読む気とやる気をなくし、無意識に本を閉じてしまうという、例のあれです。
店頭でパラパラとめくっていただけたらと思うのですが、本書にはあまり公式が出てきません。出てきても、できるだけ身近な例で説明しています。
例えば、電気の基本中の基本「オームの法則」は山・川・海で説明していますし、距離の2乗が関係してくる「クーロンの法則」なんて、遠距離恋愛で説明しているんですよ。式とはあまり関係ありませんが、普段何気なく使っている電池の性質については、おサイフから出せるお金を例に説明しています。
山下明さんは工業高校の現役の教諭でいらっしゃいまして、生徒さんがその場で理解できるよう、日々、授業を工夫されているそうです。本書には、そんな授業の内容が詰まっています。
数学が得意な人に「式を見ればわかるじゃん」と言われるたび、「いやいや、その式について言葉で説明してくれないと理解できないのだよ」と思った人は多いはず。電気回路には付き物、悩ましい三角関数の基本も、私はこの本の編集作業でようやくピンときました。
しかし、どんなに身近な言葉を用いて説明しても、電気は数学と物理の世界なんですねー。当たり前ですが、そこは諦めるしかないようです。
admin