「プログラミングは基礎教養だ」
デブサミ2015でドワンゴの川上量生さんが、こうおっしゃっていました。カドカワの新入社員は、編集者でもプログラミング研修が必須になるんだとか。たしかに、本も情報サービスなので、編集者がプログラミングを分かっていれば、もっと新しいコンテンツサービスを企画、設計しやすくなるはず。
※ドワンゴの川上量生さんの講演の模様はこちら(開発者のための実装系Webマガジン「CodeZine」に掲載されています)
実は、この話を聞いたときに編集していたのが『ブレイクスルーJavaScript』という本です。編集者以上に、ウェブデザイナーは今、エンジニアとしてのプログラミング力が要求されつつあると思います。この本は、少しでもそういう方の力になればと企画した本だったわけですが、川上さんの話を聞いて、私も編集者として他人ごととは思えなくなりました。
かつてフロントエンドとバックエンドは大きな壁できっちり分かれていました。今思えば、平和の時代だったのかもしれません。その壁を越えようとは思う人は、FLASHを使う人たちをのぞけば、ほとんどいなかったのではないでしょうか。私は編集者として、FLASHの本をたくさん作ってきましたが、彼らはこの壁を自由に行き来できる魔法使いのような人たちでした。しかし、S・ジョブズのRIA批判を皮切りに、ウェブは急激にミニマリズムにシフトします。この数年で、あれよあれよという間にスマートデバイスが時代を席巻し、古い魔法は吹き消されてしまいました。
そして今や、この壁は「乗り越えがたきもの」から、誰もが「乗り越えるべきもの」へと変わりつつあります(フロントエンドでもバックエンド的なことを自由にやれるようになってきたということかもしれませんが)。
確かにjQueryをはじめとして、さまざまなJavaScriptのライブラリやツールが壁を越える手助けをしてくれている現実もあると思います。しかし、本書はあえてプログラミング言語としてのJavaScriptの「肝」だけにフォーカスしています。
JavaScriptのライブラリやツールはたいへんなスピードで生成変化していて、毎年新しいものが出てきては消えるという状態です。なので、個別なツールにしぼるよりも、むしろどんなものがきても対応できる普遍的な力をつけられる本にしようと考えました。
ただ、JavaScriptの言語仕様を一から学んでいく本であれば、すでにたくさん本があります。問題はむしろ、それらをなかなか読み通せない、また読んでも実際のコードには落し込めない、そういった方たちがたくさんいるということです。そこで、そういう方たちが「壁」にぶつかるところだけを丁寧に解説する本を作ろうと決めました(なので、この本は薄いのです。よく言えば、美味しいところだけをご提供しているというわけです。価格もお手頃です)。
ちなみに、美味しいところとは、
- オブジェクト指向
- UI・インタラクティブ表現
- グラフィック表現
- Ajax・API連携・データ検索
- シングルページアプリケーション
「プログラミングってなんか面白いかも」
これは、この本の編集をした自分の感想でもあります。読者の方にも、そう思ってもらえたら嬉しいです。
せきね