2年前のある日のこと。
「うわー、この本すごい!」WEBで公開されている原書の紙面を見た瞬間、私のテンションは上がっていました。画期的なフレームワーク“キャンバス”を扱った内容もさることながら、ビジネス書には見えない横置き大判のデザインにも驚きました。
調べてみると、未翻訳ながら当時すでに日本でこの原書は話題になっていました。

原書『Business Model Generation』より
先日、著者のイヴ・ピニュールさんとティム・クラークさんに制作時のお話を伺う機会がありました。1冊目の『ビジネスモデル・ジェネレーション』は9年かけて制作され、その間、複数の出版社に刊行を断られ初版は自費出版だったそうです。
続編の『ビジネスモデルYOU』も苦労の度合いは負けず劣らずで、43カ国の328人による共同制作で、通常2~3回の校正がなんと16回も! とにかく制作者の熱い思いを感じるエピソードが盛りだくさんでした。
ラッキーなことに2冊ともウチの会社が版権取得し、日本語版制作を担当できることになったのですが……この本(プロジェクト)はたくさんの関係者や特殊な造本設計などなど、とにかくあらゆることが未体験ゾーン!
そんな私がテンパリつつも、設定した目標(ゴール)は「原書を見たときの衝撃を読者に伝える」ということです。ささやかな目標ともいえますが普通、企画時の「勢い」は、本の構成や表記を整えていく間に失われがちです。さらに時間的制約やコストの問題なども容赦なく押し寄せてきます。
結果、最初に目指した頂上(テーマや目標)からずれてしまった……ということで頂上をあきらめ人知れず下山したり、いつの間にか全然違う山に登っていることも(進路変更したおかげで遭難を免れる場合もありますが)。
けれど、やっぱり最初に感じた「勢い」こそ、著者さんが一番伝えたい本の「キモ」なのだと思います。それはテーマに対する著者さんのひたむきな「思い」そのものだからです。
『ビジネスモデル~』の原書を見たとき、おそらく私は紙面からほとばしる何百人という共同制作者の(通常は商業用にある程度整理されて薄まっているはずの)、熱い「思い」に圧倒されたんじゃないかと。

『ビジネスモデル・ジェネレーション』巻頭に掲載されている共同制作者リスト、470人の「思い」(というか「念」?)
魅力的な企画は理屈抜きで「勢い」があり、著者さんの「思い」が宿っています。 この「勢い」をキャッチする→楽しむ→そして魅せる編集をできるだけ心がけられたらと思います。
えぐさ