『ポケット百科』というシリーズをご存知ですか? LINEなど流行のWebサービスや、Nexusなど注目度の高いガジェットの操作を解説するシリーズです。
“話題のアイテムの解説書“は多くの出版社から刊行されているので、書店の一角にTwitterやiPadの本が、たくさん並んでいるのを見たことがあるのではないでしょうか。「ポケ百(ひゃく)」もそこにいます。
並居るライバル群から、ポケ百を選んでもらうためには「旬を逃さずいかに早く刊行できるか」が重要課題です。通常、書籍は数カ月かけてじっくり作るのですが、ポケ百は短距離を駆け抜けるように作成しています。
なかでも製品発売直後が旬のガジェット系は、早さが極めて大切。製品発表の前から、販売日やその特徴を予想して準備を進めつつ、担当編集者に課せられるいちばんの大仕事は「端末の入手」。
操作解説書は正確さが命です。内容の正しさを確認するためには、実際に原稿のとおりに操作してみる必要があります。なので、いくら準備を進めても最後に実機で検証して内容の確認をしない限りは刊行まで漕ぎつけません。
「出版社なら先に端末を借りられるんじゃないの?」と思われるかもしれません。確かに、事前に借りられる場合もあります。でも、事前に端末を借りられない機種もあり、その代表がApple製品です。
予約開始日もわからない、販売開始日もわからない、読者のみなさんとまったく条件は同じです。端末がなくて本が出せないなんてことはあってはならないので、毎回必死に入手方法を考えます。
例えばiPhone5の場合、人気商品なので予約をしくじったら、いつ端末を手に入れられるかわかりません。早く予約をして、販売当日に端末を入手する必要があるのですが、厄介なことに、予約受付の開始時間すら数時間前の発表という具合です。しかも、多くのお店が朝からの行列禁止。いかに早く受付開始時間をキャッチして、お店に行けるか!?これが勝負です。
そこで、予約日当日はTwitterで予約情報をチェックし続けました。すると、とある家電量販店が独自に予約受付の対応を始めているとのツイートを発見 ! 早速お店に行ってみると、すでに行列ができていました。
こうなったら並ぶしかない! と列に加わり、予約開始まで待つこと2時間。長い列の先頭組として予約を済ませ、受取日9月21日(発売日当日)と書かれた予約票を見て、ひと安心したのでした。
無事に端末が手に入れば、著者・DTPデザイナー・編集の三人四脚で入稿に向かってまっしぐら。鮮度良好な1冊になるように励むのみです。ポケ百を見かけた際には、こんな編集者のドタバタ劇を想像していただけると、面白さが増すかもしれません。
いとう