この度、SDGsの取組みの一環として、この連載を立ち上げる運びとなりました。
テーマは、『環境にやさしい本づくり』です。
いつも一緒に翔泳社の本をつくってくださっている紙屋さん、印刷・製本会社さんなどにインタビューをしてみたり、工場見学にお邪魔してレポートを書いてみたり……(内容はおいおい考えていきます!)。現場のみなさんのお話を中心に、書籍制作における環境配慮の今と未来、について学んでいきたいと思っています。
Vol.1では、この連載をはじめるまでのお話をします。
――本づくりと切っても切れないSDGs
近年、採用面接でいらっしゃる学生さんから「御社はSDGsについてなにか活動されていますか?」と聞かれることが度々あるとのことです。日頃生活しているなかでもSDGsという言葉をしょっちゅう目にしますよね。「うちの子が幼稚園で流行ってるSDGsの歌にハマってるの~」なんて話も。
そんななか、翔泳社でもSDGs勉強会がはじまりました。いまのところ、月に一度、メンバーは3~5人で行っています。SDGs書籍をつくった若手編集者や女性役職者やベテラン勢、そして制作課(書籍を作る際に、印刷所や製本所とやりとりをしたりする窓口のような課です)のわたしもメンバーに入れていただきました。
わたしたちが日々つくっている紙書籍は、自然資源の木からできる紙を使い、工場で印刷・製本し、お店に運び、売れなくなったらさいごは破棄します。
今SDGs=持続可能な開発目標、として挙げられている環境問題に直結していますよね。
翔泳社としてできることはなにか? 制作課としてできることは……?
解釈の幅が広く頭を抱えましたが、だからこそ小さなことでもできることはあるはず……!
ということで、まずは自分たちの現状把握からスタートしてみました。
――お世話になっている会社さんへ、アンケートを実施!
いつもお世話になっている印刷会社、製本会社、加工会社のみなさまに、アンケートにご協力いただきました。
「グリーンプリンティング認定制度」という環境に配慮した印刷製品を認定する制度が、環境省「環境ラベル等データベース」に記載されています。それをベースにインキの種類や表面加工・製本の材料について14項目に〇×で回答いただきました。
インキは、化学物質なので、まずは人体に危害を及ぼさないか、また、資源の持続可能性や古紙化しやすいかなどが環境に配慮しているかの基準となります。
表面加工は、印刷を保護するためにカバーや帯に施すことが多いですが、フィルム貼りよりも、ニス引きと呼ばれる透明樹脂と油が原料のニスを引く加工のほうが、古紙化に適しているとされています。
製本材料も同じく、背を固める糊は、古紙化の際に大きな塊で残り取り除きやすい種類のものが好ましいとされます。
アンケートの結果は、すべて○だったのは13社中2社。工場で生産している全製品が対象となると、すべてクリアというのはなかなかハードルが高いようです。
チェック項目毎にみてみると“人体に危害を及ぼす物質を使用していない”“リサイクルしやすい材料を使う”といった点で、ある程度の基準はすべての会社がクリアしていました。
その他の環境配慮に関わる実施内容については、以下の項目が挙がりました。
・環境対応型のラミネート加工として原料が木材由来のラミネート加工を提案している
・工場に太陽光パネルと設置した など
――「配慮し続ける」ことが大事
アンケート結果を踏まえて、わたしたちにできることを改めて考えてみました。
「各社と改善できる点を模索する」「まだ取引のない環境配慮に特化した会社さんにお話を伺ってみる」具体的にできることもいくつか挙がりました。
長年業界に精通されている営業さんとの雑談のなかで、業界の環境対策における過去の変遷も伺いました。地球の変化や技術の進歩にあわせて、なにが環境によいかも変わっていく。大事なのはその時々に最善と考えられる選択をし、情報をきちんと更新していくこと。
まずはしっかり学び、考える。そして、また学び、また考え……と、繰り返し行っていくなかで、時代に即したかたちの環境にやさしい本づくりを目指していこうと思います。
せっかく学ぶのであれば、わたしたちの周りにいらっしゃるプロの方々から知識やご経験をご教示いただけたら……! ということでこの連載をはじめることになったわけです。
Vol.2ではさっそく、この道数十年、用紙会社の営業さんへのインタビューを予定しています! 秋口のアップになるかなと思います。
今後もタイトル【環境にやさしい本づくり】で投稿していきますので、どうぞよろしくお願いします。
制作課 しばた