貯蓄では損をする時代に資産を守るには? 『わが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話』編集者に聞く|翔泳社の本

貯蓄では損をする時代に資産を守るには? 『わが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話』編集者に聞く

2015/06/26 08:00

 低成長時代が続く日本で、これから不可欠となるであろう金融知識。漠然とお金に対する不安を抱き、わが子にお金で苦労してほしくないと思っていても、具体的にどうすればいいのかはなかなか分かりません。そこで翔泳社では6月19日、『外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話』を刊行しました。担当編集の石原によれば、本書は子供を持つ親にぜひ読んでもらいたいとのこと。今回、その思いについて聞きました。

わが子に託す遺書のつもりで書いた

 6月19日(金)に翔泳社が刊行した『外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話』は、お金や投資についての解説本です。投資と聞くとギャンブルをイメージしたり、素人が手を突っ込むと損をするだけのような気がしたりしますが、著者のジョン太郎さんは「資産を守るために投資をしましょう」と説きます。

「お金」と「投資」の本当の話

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外資系金融マンがわが子に教えたい
「お金」と「投資」の本当の話

著者:ジョン太郎
出版社:翔泳社
発売日:2015年6月19日
価格:1,380円(税別)


目次
第1章 基礎編 子供に教えたい「国」と「お金」の話
第2章 基礎編 子供に教えたい「フロー」と「ストック」の話
第3章 基礎編 子供に教えたい「会社」と「決算書」の話
第4章 基礎編 子供に教えたい「資本家」と「労働者」の話
第5章 実践編 子供に教えたい「投資」と「運用」の話①
第6章 実践編 子供に教えたい「投資」と「運用」の話②

 資産を守るには銀行に預金するのが当たり前だと思われています。しかし、低成長時代の日本では金利が消費税の100分の1に満たず、さらにインフレのリスクを考えれば、どんどん資産が目減りしていくという恐るべき事実が横たわっています。つまり、かつて親に言われたような「無駄遣いせず貯金をしなさい」という教えを信じ、さらに自分の子供に言い聞かせていると、自分だけでなく子供までもが損をしてしまうのです。

 本書はまさに、いまの時代に資産を守るにはこうすべきだと、著者がわが子に教えたい金融知識を詰め込んだ1冊です。なぜ読者に直接伝えるのではなく、「わが子」なのか? このコンセプトが生まれたのは、本書の打ち合わせ時期にとある偶然が起きたからだったそうです。

「私がジョン太郎さんに、何かお金の本を書きませんか、と相談しに行ったところ、あれやこれやといろいろな話が出ました。その中で、投資に関する本は多々あれど、どれもプロから見れば物申したいレベルのものがほとんど、と聞きました。だったら、現役の外資系金融マンであるジョン太郎さんに書いてもらえればいいと思ったんです。

 ですが、投資のノウハウ本やお金に関するビジネス本は巷にあふれています。この銘柄を買え、という雑誌もあります。もともとそうした本にするつもりはなかったんですが、もっとほかに独自性がないといけない、どうしよう、と考えていたタイミングで、ジョン太郎さんも私も子供が生まれたんです。子供が生まれると、それまでの世界観が一気に変わります。で、これだ、ということで、『わが子に教えたい』というコンセプトが生まれました」

 ジョン太郎さんいわく、「自分が死んだら本書を子供に読み聞かせてほしい」とのこと。金融業の最前線に立つ著者が、わが子に託す遺書のつもりで書いたのが本書というわけです。

本質的な知識こそが、投資を行なうための最大の武器

 お金に関して、漠然とした不安を抱かれている方は多いと思います。終身雇用はなくなり、国民年金も満足に支払われるのか分からず、安住の地と思った会社では給料も上がらない……ともかく将来の不安は、すなわちお金の不安として認識されています。本書にもあるように、総務省家計調査によれば、65歳~69歳の1か月の支出は平均26万6000円。ですが年金だけの収入では半分にも満たないそうです。

 本書がもし投資のノウハウ本であれば、投資をして資産を増やし、老後を楽しく過ごしましょう、と冒頭から無責任に勢いのよいことを述べていたかもしれません。しかし、ジョン太郎さんは極めて冷静に現在の日本を眺め、投資こそ貯蓄や預金に代わる「資産を守る方法」だといいます。預金はもはや、資産を目減りさせてしまうとさえ断言します。

担当編集:石原

「普通、資産を守ろうとすれば、銀行に預金すると思います。私も親が高度成長時代を経験しているので、『貯蓄をしろ』と口酸っぱく言われました。ですが、ジョン太郎さんに言わせれば、いまやそれは賢い方法ではありません。なぜなら、本書がよって立つ前提は『日本はこの先、大きな経済成長をすることはなく、低成長をずっと続けていくことになる』という考えだからです。もう銀行に預けておけば勝手に資産が増える時代ではありません。

 低成長しかしないということは国力が落ち、成長著しい諸外国に対して日本の通貨が弱くなる、つまり円の価値が下がることを意味します。さらに、現在の金融政策は通貨の流通量を増やす緩和の方向、つまりインフレの方向です。緩和がほどよくいけばいいですが、行きすぎればインフレとなり、これも円の価値を下げることになります。そこで、ジョン太郎さんは、日本ではなく外国で資産を育てる(例えば、成長国の企業株や債権を買うなど)という考え方を提案しています」

 とはいえ、投資の方法を具体的に教えてくれるわけではありません。目次を見ていただければ分かるように、そもそも通貨・お金とは何かといった事柄を重点的に解説しています。

第1章 基礎編 子供に教えたい「国」と「お金」の話
   ~今の子育てと昔の子育ての違い~
第2章 基礎編 子供に教えたい「フロー」と「ストック」の話
   ~お金を増やすことの意味~
第3章 基礎編 子供に教えたい 「会社」と「決算書」の話
   ~年商10億円は本当にすごい?~
第4章 基礎編 子供に教えたい「資本家」と「労働者」の話
   ~会社で一番偉いのは社長ではない~
第5章 実践編 子供に教えたい「投資」と「運用」の話①
   ~宝くじを買うより大切なこと~
第6章 実践編 子供に教えたい「投資」と「運用」の話②
   ~より実践的な投資の知識~

 なぜならば、こうした金融知識がなければ、資産を守ることはできないのです。きっと皆さん、教わったことのないことばかりでしょう。欧米では金融の授業があるそうですが、日本の学校教育ではきちんと教えてもらえる機会はありません。お金とはいったい何なのでしょうか。あるいは、お金を稼ぐというのはどういう意味で、借金とは何を意味するのでしょうか。

家族とわが子の将来を守るための「投資」

 最も気になるのは、ギャンブルと投資の違いでしょう。ギャンブルは胴元が必ず勝つ設定になっていますが、投資は例えば企業が今後成長するかしないかというように、ある程度の予測が立ち、数学的に期待値が原資を上回ることが多々あります。そういう企業の株を買えば、資産が増える可能性は高いでしょう。

 現在30歳の方が、30代は毎月2万円、40代は毎月3万円、50代以降は毎月4万円で65歳まで積立をした場合、積み立てた元本は累計で1168万円になります。タンス預金ならば、このままの額が運用結果です。一方0.05%の預金で運用していった場合は1177万764円。もしも5%で運用できれば2778万355円、10%で運用できれば、なんと7733万3369円にもなります。(本文より)

 もちろん10%で運用できるかどうかは定かではありませんが、投資をしていかに勝つか、と考えるのではなく、いかに適切に運用して資産を守るか、と考えることが本書の要点です。なにより、そう考えるために必要な知識が惜しげもなく散りばめられています。

 投資とは、言い換えれば、お金を使ってお金を増やすことです。どういうことかというと、投資すればお金を自由には使えませんが、その不便さに応じて返済時に元本+利子がつくのは皆さんご存知のはず。そう、これは銀行の商売とまったく同じ仕組みです。わが子にこうした金融の仕組みを教えてあげれば、将来、お金で苦労する可能性を少しでも減らすことができるでしょう。

ありそうでなかった、お金の育児本

 書店では育児本の棚にも置いてもらいたい、と石原が担当編集の立場で申し出たところ、社内では却下され、ビジネス本として扱われることになったそうです。しかし、本書は大人の皆さん自身が学ぶだけでなく、子供にもぜひ教えてあげてほしいという思いから生まれた本です。

 お金の育児本として、お母さんお父さん、いかがでしょうか。

 著者のジョン太郎さんはこれまでにも『ど素人が読める決算書の本』や『ど素人がはじめる投資信託の本』を書かれています。本書同様、どちらも分かりやすく解説されていますので、よければ合わせて読んでみてください。

「お金」と「投資」の本当の話

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外資系金融マンがわが子に教えたい
「お金」と「投資」の本当の話

著者:ジョン太郎
出版社:翔泳社
発売日:2015年6月19日
価格:1,380円(税別)


目次
第1章 基礎編 子供に教えたい「国」と「お金」の話
第2章 基礎編 子供に教えたい「フロー」と「ストック」の話
第3章 基礎編 子供に教えたい「会社」と「決算書」の話
第4章 基礎編 子供に教えたい「資本家」と「労働者」の話
第5章 実践編 子供に教えたい「投資」と「運用」の話①
第6章 実践編 子供に教えたい「投資」と「運用」の話②