たった45分間で、書籍の知識を吸収しチーム作りの基礎を体感できる
今回のジグソー法読書会ワークショップは、実はデブサミ全体で言えば初めての実施ではない。デブサミ2017で、「『ジョイ・インク』Joy, Inc.~共感のソフトウェアづくりについてみんなで考えるワークショップ」というタイトルでセッションが行われ、好評を得た。今回、どうしてもこの読書会ワークショップを関西でやりたかったと話す実行委員の吉池氏と、自著でのワークショップを初めて行った和智氏。2人にこれまでの思いと開催後の感触を尋ねた。
吉池裕氏(デブサミ関西2017実行委員)
――本セッションを企画するにあたり、吉池さんの熱い思いがあったとお聞きしました。どういった経緯でこのセッションを組まれたのでしょうか。
吉池:東京のデブサミでの体験から、どうしても関西でやりたくなったんです。実行委員ではなく、参加者として行った2月のデブサミ2017では、『ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント』の読書会ワークショップに参加しました。そこでの議論はとても盛り上がって、良い経験になったので、関西でも実施したいと思いました。
――具体的には、どういった点でしょう。
吉池:実際に体験してみると、2つのいいことがあると気づきました。1つは、書籍の内容を短時間で、かつ深く理解できること。もう1つは、チームを作れることです。3人1組になって、書籍の内容について話し合うのは、単純ですが「チームになる」ということです。仕事でプロジェクトに取り組むとき、必ずチームを作ります。分担して開発し、リリースするという行程に、この読書会の作業も似ていました。業務上多くの人が苦戦するチーム作りについて、書籍で学んだうえで実際に体験もできる。しかもたったの45分で、となれば、より多くの人に体験してもらいたくなったんです。
――なるほど。それで今回もチーム作りに関する書籍『スモール・リーダーシップ』を使ったのですね。これだけ勢いよく盛り上がったのは、セッションの構成に工夫があったからではないですか?
吉池:グループの分け方や立ち上がってのワークが良かったのもありますが、本の内容が良かったと思います。今回抜粋したいずれのパートにも、初対面のハードルを乗り越えられるほどの「あるある」が詰まっている。「メンバーの意見を引き出すのに苦労している」「議論が抽象的になりがち」などの課題は、多くの会社が抱えています。そういった共通項が、出会ったばかりの参加者たちをチームにしたのだと思います。
――100人でできる読書会、可能性が広がりそうですね。
吉池:読書会、と聞くと思い浮かべるのは、せいぜい10人~15人の少人数で、1冊の本を読み込んでディスカッションする、というものですよね。ですが、このジグソー法を用いれば、100人規模で実施できます。ほかにはない方法なので、今後さまざまなところに広がっていくといいなと思います。
著者 和智右桂氏
――実際にワークショップで参加者の反応を見て、いかがでしたか。
和智:グループワークを始める際の「まずは、お隣の方と目を合わせてみましょうか」という私のセリフが終わるか終わらないかのうちから、議論が一斉に始まり、会場が一気に活気づきました。スタンドアップでのディスカッションをお願いした局面もあったのですが、一日の最後のセッションでお疲れだったはずなのに、熱気は止まりませんでした。それだけ皆さんがチーム運営に関してさまざまな思いを抱えているんだと、改めて実感しました。
――ワークショップの依頼を受けられた際には、どんな不安、あるいは期待があったのでしょう。
和智:そもそもワークショップの方針が「100人近い参加者の方々に、45分という限られた時間の中で『黙読+ディスカッション』をやっていただく」という、かなり参加者の方への依存度が高いものであったため、すべての方々に楽しんでいただくのはそれなりに難しいかもしれないとは思っていました。一方で、以前関西で講演した経験から、参加者の方々のノリは良いだろうと想像しており、積極的に参加していただければ面白いものになるだろうと期待していました。
――直前にグループ分けをどうするか決めるなど、試行錯誤があったとお聞きしました。どういった準備をされましたか。
和智:来場者の方々の様子や実際の会場を見たり、ワークショップ参加者の方の所属を見せていただいたりと、現地でいくつかフィードバックを受けました。それによって、「事前の配布資料をどう置くか」「チームをどう作ってもらい、どこでディスカッションしてもらうか」といった段取りや、「同じ会社で来ている方々を同じチームにするか」といった席順に関することについて、運営チームで打ち合わせをして認識を合わせました。
――書籍の中で、ワークショップ参加者に一番伝えたかった、または考えてほしかったのはどういった点でしょうか。
和智:書籍の方は、「チーム」を主軸にしつつ、題材としてはかなり幅広い領域を対象にしています。そのため、ワークショップにするときにはディスカッションが発散しないように「チームで議論する」というテーマにフォーカスしました。書籍の中で基本的な考え方については書いているものの、実践にあたってはそれぞれのチームが置かれた文脈に合わせた工夫が必要になりますので、そうした点について議論していただければと思っていました。
――最後に、今回のワークショップを終えて、良かった点、また課題だった点があれば教えてください。
和智:やはり、参加者の方々が積極的に議論してくださったことが最も良かった点だと思っています。時間が限られていたため、場面場面で議論を打ちきらないといけなかったのは残念でした。もう少し長い時間をとってこうしたワークショップができる機会があれば嬉しいです。