健康食が肥満や病気の原因になる? 豆腐や玄米、蕎麦に含まれる毒素「レクチン」とは何なのか|翔泳社の本

健康食が肥満や病気の原因になる? 豆腐や玄米、蕎麦に含まれる毒素「レクチン」とは何なのか

2018/06/20 07:00

 昨年アメリカで発売され、6月19日時点でAmazon.comで総合3位にランキング、950件以上の5つ星がついた『The Plant Paradox』。すでに世界18か国で発売が決定されている話題の本が『食のパラドックス 6週間で体がよみがえる食事法』として、ついに日本でも6月20日に刊行となりました。本書でスティーブン・R・ガンドリー医学博士が説くのがレクチンフリーの食事法。今回はレクチンとはどんなもので、私たちの体がどう作られてきたのかを紹介します。

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肥満や病気の原因は健康食だった!?

 健康食といえば、全粒粉パンや玄米などの茶色い食べ物、トマト、キュウリなどの野菜を思い浮かべることでしょう。最近では、チアシードなどものスーパーシードも注目されています。

 しかし、これらのヘルシーフードを食べ脂肪を毛嫌いしているスリムな人たちが、さまざまな病気を患いアメリカの著名な心臓外科医であるガンドリー博士の外来にくるようになりました。そこで博士は、植物の種子や皮などに含まれる「レクチン」というタンパク質が、現代人の健康を阻害していることを発見します。

 1960年代半ばから、肥満、糖尿病、自己免疫疾患、喘息、アレルギー、鼻炎、関節炎、がん、心臓病、骨粗しょう症、パーキンソン病、認知症などが急増した。そして同時期に、私たちの食事が少しずつ変わってきたことは、決して偶然ではない。どうしてわずか数十年で社会全体の健康状態が悪化し、体重が増えたのか? 私はその最大の答えを見出した。それは、レクチンと総称されるタンパク質群から始まっている。(中略)

 レクチンは初耳だろうが、グルテンなら聞き知っているだろう。グルテンは数千種類もあるレクチンの一種だ。レクチンはほぼあらゆる植物に含まれ、実際、牛肉、豚肉、鶏肉、魚など今日の米国の食事を構成する大半の食材に含まれている。レクチンはさまざまな働きをするが、植物が動物と戦う強力な武器である。植物は、ヒトが現れるはるか前から、飢えた昆虫からわが身と子孫を守る術を身につけていた。すなわち種などの部位にレクチンをはじめとする毒物を蓄えたのだ。

 そして昆虫を殺傷するこうした毒物は、私たちの健康も密やかに衰えさせ、いつの間にか太らせていたのだ。本書を『The Plant Paradox』(原題)と題したのは、多くの植物性食品は身体に良く、私の食事計画の基礎となるものである一方、その他の「健康食」とされる植物性食品が実は病気や肥満をもたらしているからだ。そう、多くの植物性食品は、あなたを病ませているのだ。

毒/味方 食品リスト一例

毒(レクチンたっぷりの「食べてはいけない食品」)

玄米、パン、パスタ、蕎麦、シリアル、ジャガイモ、砂糖、豆類全般(もやしのようなスプラウトもダメ)、豆腐、枝豆、ピーナツ、カシューナッツ(ナッツではない)、チアシード、トマト、ナス、キュウリ、カボチャ、メロン、トウモロコシ、ローカロリー飲料……など

味方(体がよろこぶ「食べて良い食品」)

アボカド、ナッツ全般、栗、ココナッツ(ミルクやクリームもOK)、オリーブ、ダークチョコレート、海藻類、キノコ類、アブラナ科の野菜類(ブロッコリー、白菜、キャベツなど)、オクラ、玉ねぎ、葉菜類、サツマイモ、サトイモ、こんにゃく、柿、味噌、キムチ……など

食べ物が人をつくる

「食は人なり」ということわざがあるように、たとえば野菜や家畜製品を食べると、その栄養は土やその家畜が食べた飼料に由来して、それが私たちの細胞へと受け渡されます。自分たちが食べているものがどのように育てられたかを知ることは、単なるライフスタイルの選択ではなく、自分の健康に直接かかわることなのだと博士は説きます。

 レクチンは植物だけではなく、動物性食品にも含まれている。牛などの動物が飼料としてレクチンたっぷりの豆やトウモロコシを食べると、レクチンはその肉や牛乳に移る。同じことは、レクチンの豊富なえさで育った鶏やその卵にも言える。やはり大豆やトウモロコシ由来のえさで育った養殖魚も同じ。

(中略)有機飼育家畜や放し飼い家畜でさえ、やはりトウモロコシや大豆──たとえそれが有機栽培であっても──の飼料を与えられているため、レクチンを含んでいる。夏には牧場で草を食み、冬には干し草を食べて育った牛から作ったハンバーガー(あるいは牛乳やチーズ)と、厩舎でレクチンたっぷりのトウモロコシや大豆を食べて育った牛から作ったハンバーガーとでは、大変な違いがある。

 第一に、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の割合が違う。いくつか例外はあるが、オメガ6脂肪酸は炎症を引き起こすが、オメガ3脂肪酸はそうではない。トウモロコシや大豆は主にオメガ6脂肪酸を含むが、草はオメガ3脂肪酸を多く含む。それだけではない。こうしたトウモロコシや大豆は、同じカロリーの草に比べても、牛をずっと太らせるのだ。体重増加について考える際には、このことを念頭に置いてほしい。

スティーブン・R・ガンドリー
スティーブン・R・ガンドリー

医学博士。ヒト微生物叢と腸との関わりの世界的権威。2000年、手術不能な冠動脈疾患患者が食事法の変更と栄養摂取の組み合わせによって劇的に回復したことに感銘を受け、それまでのトップ心臓外科医としてのキャリアの方向性を大きく変えて、カリフォルニア州に国際心肺研究所と、その下部機関として回復医療センターを設立し、研究と臨床を行っている。対象には心臓病、糖尿病、自己免疫疾患、がん、関節炎、腎臓疾患、アルツハイマー病などの神経疾患が含まれ、先進的な血液検査と血流検査によって患者の健康寿命を最長化している。独立医師格付け機関キャッスル・コノリーによる米国のトップドクターに21年連続で選出。イェール大学、ジョージア医科大学卒業。

カロリーは問題ではない

 ダイエットが成功しないのは、自らの怠慢や意志の弱さのせいではなく、グルテンが豊富な「食べてはいけない食品」を摂っているか、「食べて良い食品」を摂っていないことが原因だと言います。

さらに、たいていの人が見逃している大事なポイントは、腸内細菌が正常な体重維持に重要な役割を果たしていること。ある種の微生物は、私たちを健康でスリムにし、一方、体重増をもたらしたり、栄養の吸収に干渉して人を病気させたりする微生物もいると博士は説きます。

 おおむね1万年前、大半の人類は狩猟採集の生活から農業を基盤とした暮らしへと変えた。それまでの食料は主に、季節の果物、季節ごとの大型動物、魚介類、ジャガイモなどから取れるでん粉に大きく依存していた。これらの食事は大きなカロリーをもたらしたはずだが、地球上の人口はごく少ないままだった。その後、穀物、豆類(いずれもレクチン食品)、そしてアジア以外のあらゆる文化において牛、羊、山羊の乳(牛乳はレクチンのようなβカソモルフィンを有する)などからのカロリーが、突如もたらされた。

 私たちの祖先がこのように食生活を変化させた理由は昔から、穀物は貯蔵が利き、動物は群れで飼育できるからと説明されてきた。穀物や豆類は年に一度しか収穫できないが、乾燥貯蔵ができる。牛や他のウシ科の動物は搾乳ができ、牛乳はすぐに飲める他、チーズに加工もできる(そしてチーズは貯蔵可能である)。こうした食料は保存できるので、天候不順や不作の時でも人口を維持できた。だが穀物、豆類、乳への移行に隠された別の理由があったとしたら? たぶん、私たちは頭から誤っていたのだ。祖先は貯蔵可能だから穀物、豆類、乳などを選択したのでない。逆に、これら3種類の食品は他の食品よりもカロリーを脂肪に転換しやすいから、としたらどうか。(中略)

 かつての摂取カロリーの考え方では、食べたものが全部吸収されることを前提にしていた。だが本書で紹介する食事プログラムでは腸内微生物叢が取り入れたカロリーの多くを消費するという驚くべき働きをするので、カロリーはもはや問題ではない。腸内細菌叢はそのカロリーを自己増殖に使って私たちが吸収できないようにするか、健康増進に役立つ特殊な脂肪に作り替えてくれるのだ。この食事プログラムでは、体内の友人たち(腸内細菌叢)がよろこぶえさをたっぷり与えてやらなければならない。つまり、これまでよりもずっとたくさん食べて、それでも体重が減るのだ。

 次回は、食べて「良い食品」「ダメな食品」リストを元に、腸内細菌叢を回復させる健康管理について紹介します。この食事プログラムでは、大半のダイエットプランと違い、カロリー計算や炭水化物量の測定などはしません。注意しなければならないのは、動物性タンパク質の摂取量だけです。低炭水化物ダイエットに取り組み、毎日タンパク質量を計算している人には驚きの、タンパク質の適量計算式もご紹介します。

あのヘルシー食材にも含まれている!? 『食のパラドックス』が提唱する「レクチンフリー・ダイエット」とは

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食のパラドックス
食のパラドックス 6週間で体がよみがえる食事法

著者:Steven R. Gundry 訳者:白澤卓二
発売日:2018年6月20日(水)
価格:1,944円(税込)

本書について

「サイエンスヒストリー」と「食事法」が合体した、今までに類がないタイプのダイエット・健康本です。レクチンフリー食の根拠となる、植物がレクチンをあみ出すにいたった経緯を科学や生物学からやさしく説き起こして丁寧に説明しています。