共生型サービスはこうして始まった
高齢者、障害者どちらのサービスも始めやすくするための制度として設定されました。
一緒にやるにはハードルが高すぎる
実際には高齢者へのサービスと障害者へのサービスを一緒に取り組んでいる団体は存在します。その場合、別々のサービスとなりますから、それぞれの要件を満たすように人員や施設要件を整えることなどが必要になってきます。そうなると同じ建物内で提供することは難しくなり、どうしても別々の施設として独立しなければならず、初期投資、ランニングコストなどの予算も負担が大きくなりがちです。
また、障害福祉事業所としての指定を受けていないものの、介護保険事業所としての指定を受けていれば、市町村の判断により、先にも述べた障害福祉サービスを提供できる「基準該当サービス」を利用することも可能です。ただし、これができるのは基本的に介護保険事業所だけであって、障害福祉サービス事業所が介護保険サービスを行うことは実質困難です。
さらに基準該当サービスは、市町村の判断によるものなので、当然市町村によって取り扱いが異なり、「あの街ではいいけど、この街ではダメ」ということが起こり得ます。報酬についても、障害の程度や必要な介護の量にかかわらず、報酬は同じで加算もない、というのも、受け入れ側としては少々不満を感じる部分でもありました。
自分の施設に合った運用を考えよう
従来の制度では、高齢になった障害者は介護保険優先の原則のもと、使い慣れた障害福祉サービスを利用できなくなるということも起きていることから、制度についての見直しの意見が出されました。
使い慣れたサービスを使い続けられないという問題もそうですが、地域によっては資源が少ない地域もありますし、福祉に関わる人的資源にも限りがあるという問題があります。そこで、共生側サービスは「今ある資源を有効的に活用」を念頭において、障害者施設もしくは高齢者施設が、もう一方のサービスを今までより実施しやすくするための制度としてスタートすることになりました。
共生型サービスとは
共生型サービスは、介護保険または障害福祉のいずれかの指定を受けている事業所が、もう一方の制度の指定も受けやすくなるようにするものです。また、報酬についても、通常運営する場合の報酬体系とは別になりますが、基準該当では一切設定されていない、いくつかの加算が付いていることが大きく異なります。
共生型は「片方の基準を満たせない場合の特例」という扱いになるため、通常の基準を満たす場合は、共生型でなく通常のサービスとして運営することが可能です。この場合は、報酬も通常通りになりますし、基準該当の制度も残ります。事業者は運営する地域や活動拠点の状況などを踏まえて選択することになります。
どのサービスを一緒に提供できるか?
共生型サービスとして提供できる組み合わせは決まっています。
何でも提供できるわけではない
共生型サービスでは、障害者が65歳以上になっても使い慣れた事業所でサービスが受けられる、地域の事情に合わせた施設運営ができる、といった観点から、デイサービスやホームヘルプサービス、ショートステイを共生型サービスとして位置づけることになっています。そのため、就労支援B型事業所が、「うちの利用者さんも高齢になってきて介護が必要な人も多くなってきたし、共生型サービスを利用して特別養護老人ホームを作ろう!」というわけにはいきません(もちろん共生型でなければ不可能ではないのですが……)。
基本的には、介護保険、障害福祉サービスにおける「ホームヘルプ」「デイサービス」「ショートステイ」に該当する施設を共生型サービス事業所として運営することができます。
具体的には?
例えばホームヘルプサービスの場合、介護保険では「訪問介護」が該当します。障害福祉サービスでは、「居宅介護」「重度訪問介護」です。ですから介護保険の「訪問介護事業所」が共生型サービスを行う場合は、居宅介護や重度訪問介護を行うことになります。
これがデイサービスになると、該当するのは介護後保険でいえば「通所介護」、障害福祉サービスなら「生活介護」「児童発達支援」「放課後等デイサービス」などです。ただし、通所介護には、一般的なもののほかに、療養通所介護という主に重度介護者を対象としたものがあります。これは別の制度であり、対象の状態も異なります。単純に障害福祉サービスの生活介護を共生型でやろう、とはできないのです。あくまでも今の利用者が今後も使える設定にしなければなりません。
これならわかる〈スッキリ図解〉共生型サービス
著者: 二本柳覚(編著)、中川亮、安藤浩樹
発売日:2018年11月28日(水)
価格:2,376円(税込)
本書について
本書は新しく始まった「共生型サービス」について、制度の仕組みの概要や、先行して行われているサービスの事例紹介、施設開設方法や運営のポイントなどを解説します。共生型サービスについて考え始めたとき、最初に読んでいただきたい本です。