いま会社に勤めていて将来は独立を考えている方や、個人事業主から事業拡大を目指して会社を作ろうと考えている方などにとって、会社設立は通過点でありながら、大きな目標でもあるでしょう。ですが、会社を設立するのはややこしくて難しい。そう思っている方は多いかもしれません。
たしかに、会社を設立するにはいろいろな書類を作成し、煩雑な手続きを経なければなりませんが、その分メリットも大きいのが会社設立=法人化です。とはいえ、節税などのメリットや書類作成、手続きの方法などをネットで検索しても、まとまった情報はなかなか得られないのが実情です。
そこで翔泳社では8月31日(月)に、必要な書類や手続きについてまるっと理解できる『自分でパパッとできるはじめての会社設立&運営 第2版』を刊行しました。本書では会社設立に必要な手続きなどをチャートに沿って解説、会社を作って事業を行なおうとしている方をサポートします。
会社設立のメリットは大きく3つある
では、会社を設立することにはどんなメリットがあるのでしょうか。本書の担当編集である昆によれば、手続きが面倒といった理由などで設立することを嫌がる方もいるそうですが、それ以上にメリットがあるといいます。
設立を迷っている方も多いかもしれませんが、会社を設立することのメリットは大きく3つあります。事業にかかる費用を経費として処理しやすくなって節税が可能になり、社会的な信用が増すので融資を受けやすく、大企業とも取引しやすくなります。事業拡大や売上向上を目指すのであれば、たとえ自分だけしかいなくても法人化すべきですね。
ただ、売上が落ちると節税ができなくなりますし、株式会社を作るには取締役会や発行株式に関することなど決めごとをたくさん作らなくてはなりません。登記の変更にも費用がかかりますから、その点には注意してください。
登記(商業登記)とは会社名や所在地、目的、資本金などについて記載したもので、法務局に申請する書類です。その前には公証役場に申請する約款というものがあり、これは登記同様に会社の概要を記載した書類です。会社の憲法にも例えられる約款ですが、これが認証されないと登記も行なえず、会社設立ができなくなります。
会社設立に必要なことをほとんどカバー
いくらメリットがあっても、やはり手続きの煩雑さに頭を悩ます方は少なくありません。しかし、それをサポートするのが本書の役目。書類作成や手続きは、ややこしいというイメージを持っている方もいらっしゃると思いますが、実際にはそれほど難しくはないのです。
会社設立の手続き自体は、頑張れば2週間ほどでできます。費用もそれほどかかりません。ですが発起人が複数いるとき、株式を誰に何%割り当てるのかなど、発起人同士で揉めることがよくあるそうです。個別のシチュエーションについて解説はしていないものの、一般的にはこうする、という流れは説明しています。残りの部分は、各人で調整してもらいたいですね。
あと、約款や登記など専門用語が多いので、それは覚えてもらうしかありません。ですが、申請は役所にしますから、専門用語の使い方や書類の書き方はほとんど定まったものがあります。書類の記入例は本書で逐一掲載していますし、必要書類をダウンロードすることもできるので、本書が1冊あればおおよそ、会社設立に必要な手続きをこなすことができます。
もちろん1人で設立することもできるんですが、もし事業が忙しくて手がまわらないときは、税理士や会計士に相談するのも手です。経理や保険の部分は専門的な知識も必要になりますからね。
株式会社にして縛られたくないなら、まずはLLCからでもOK
本書の特徴の一つとして、最近注目を浴びているLLC(Limited Liability Company=有限責任会社、会社法上は合同会社)の設立についても解説していることがあります。株式会社とは異なるLLCとはどんなものなのでしょうか。
LLCと株式会社の大きな違いは、LLCは出資者(オーナー)が社員であり意思決定が可能ですが、株式会社では出資者が株主であり経営者または社員ではないことがほとんど、というところです。つまり、株式会社では経営者と社員は会社のオーナーではなく、会社の意思決定も株主総会で行なわれます。しかしその分、経営者は事業資金がなくても運営が可能になりますし、社員が負債のリスクを負うこともありません(株主が出資範囲で責任を負います)。
また、LLCでは出資者同士で運営契約を定めさえすれば、出資比率に応じた利益配当をしなくてもよくなり、利益を内部留保することもできます。株式会社では、原則として利益は株主へ配当しなければなりません。これにより、LLCでは新規事業への再投資が可能になるため、長期的な事業を行ないやすいといえます。株式会社は増資や融資によって資金を賄うのが通常です(増資は返済義務がなく利益配当義務のある資金で、融資はその逆です)。
このほか、手続きや運営上での違いもありますが、おおまかにいえば、LLCは小規模の事業で自由さを求める方に向いていて、株式会社は中・大規模の会社を目指す方に向いているといえるでしょう。
最近はLLCで起業する方も多いそうです。ただ、最初から株式会社を設立する場合と、LLCを株式会社に組織変更する場合では、後者のほうが費用がかかるので注意が必要です。
会社設立や事業計画、迷ったらこの1冊
会社設立は、すでに事業計画がある程度定まっている方にとって喫緊の課題です。そんなときはぜひ本書を参考にしていただきたいと思いますが、事業計画自体を作れず困っている方には『自分でパパッとできる事業計画書』をおすすめします。また、飲食店の開業と経営には『自分でパパッとできるはじめての飲食店開業&経営 第2版』が参考になるのではないでしょうか。
ややこしくて難しいというイメージのある会社設立も、順を追って準備することで誰でも難なくやり遂げることができるようになります。
ぜひ本書を読んで、人生の次なる一歩「会社設立」をやってみてください。