はじめに
LPI認定試験(LPIC)は、世界中で実施されている、Linux技術者認定試験のデファクトスタンダードです。LPICはレベル1からレベル3まで実施されており、本書はLPI認定試験レベル1の試験範囲を網羅した学習書です。約3年ぶりの改訂となった2018年10月の改訂(バージョン5.0)に対応しています。
本書はLinux Professional Institute, Inc.が公表している試験範囲に基づき、初学者でも効率的に学習できるよう作られています。同時に、試験対策にとどまらず、Linuxや周辺技術について幅広い知識を得ていただけるよう配慮しています。単に取得すべき「資格」として捉えるのではなく、LPICレベル1の学習を通して、Linuxについての知識を確実にし、Linuxのスキルを高めていただけるよう願ってやみません。
最後になりますが、本書の執筆にあたっては、株式会社翔泳社の各スタッフ、編集協力をいただいたトップスタジオ様をはじめ、関係者の方々には大変お世話になりました。ここに感謝いたします。
著者:中島 能和(なかじま・よしかず)
Linuxやセキュリティ、オープンソース全般に関する執筆や教材開発に従事。主な著書に、『Linux教科書LPICレベル1』『同 レベル2』『ゼロからはじめるLinuxサーバー構築・運用ガイド』『CentOS徹底入門』『Ubuntuサーバー徹底入門』『Linuxサーバーセキュリティ徹底入門』(翔泳社)、『1週間でLPICの基礎が学べる本』『パソコンで楽しむ 自分で動かす人工知能』(インプレス)などがある。
LPI認定試験とは
LPI認定(Linux Professional Institute Certification)とは、国際的な非営利団体(NPO)である「LPI(Linux Professional Institute:Linuxプロフェッショナル協会)」が実施しているLinux技術者のための認定プログラムです。Linuxの認定試験としては、Red Hat社が実施しているRHCE(Red Hat Certified Engineer)試験などがありますが、LPI認定試験はベンダーやディストリビューションに依存せず、中立的な立場でLinux技術者の技術力認定を行います。
LPI認定試験の概要
LPI認定試験の種類と試験科目
LPI認定試験の種類と試験科目LPI認定試験は、レベル1からレベル3まで3段階に分かれており、レベルが上がるに従って難易度は高くなります。レベル1は初級者、レベル2は中級者、レベル3は上級者とみなすことができます。Linux経験年数の目安としては、レベル1では半年〜1年程度、レベル2では3〜4年程度とされています。認定はレベル順に取得していく必要があり、レベル2を取得するにはレベル1を、レベル3を取得するにはレベル2を先に取得しなければなりません。
レベル1およびレベル2の認定を取得するには、各レベルで必要とされる2つの試験に合格しなければなりません。LPI認定試験レベル1の取得には、「101試験」と「102試験」に合格する必要があります。
2つの試験を同時に受験する必要はありません。また、どちらから受験してもかまいません。両方の試験に合格した時点で、LPI認定試験レベル1を取得できます。
出題内容と重要度
LPI認定試験では、それぞれの出題内容に重要度が付けられており、重要度の高い出題内容から出題される傾向があります。重要度の数値が大きいほど出題される割合が高くなります。試験にヤマをかけるのはおすすめしませんが、短期間で試験に臨む場合や、受験直前に集中的に復習する場合などは参考にするとよいでしょう。
レベル1試験の各出題内容の重要度は、次のとおりです。
受験の申し込み手続き
LPI認定試験を受験するにはLPI-IDの取得が必要です。LPI-IDを取得するには、下記のURLにアクセスして必要事項を入力してください。登録が完了すれば、メールで登録情報が送られてきます。
https://cs.lpi.org/caf/Xamman/register
なお、受験に際しては、次のいずれかの方法で申し込み手続きを行います。
ピアソンVUEのホームページ上で申し込む
ピアソンVUEのホームページ上で直接、申し込み手続きが行えるようになっています。下記のURLで確認の上、申し込みを行ってください。
https://www.pearsonvue.co.jp/test-taker.aspx
ピアソンVUEで申し込みを行うには、あらかじめ受験者登録をしておく必要があります。受験者登録するには、専用の登録書をピアソンVUEのホームページからダウンロードして必要事項を記入し、電子メールまたはFAXでピアソンVUEに送信します。登録手続きには1営業日が必要です。登録完了の連絡はないので、送信の翌日以降に申し込み手続きを行います。
申し込み手続きが完了すると、予約確認書・領収書が電子メールで送られてきます。申し込み内容に誤りがないか確認しておきましょう。
ピアソンVUEへ電話で申し込む
電話で申し込む場合は、ピアソンVUEコールセンター(0120-355-583または0120-355-173)へ電話します。オペレータの指示に従って受験申し込みを行ってください。
受験の実際
試験会場には、試験開始時間の15分前までに到着するようにします。到着したら受付手続きを済ませてください。受付では、運転免許証、パスポートなどの身分証明書が必要になります。試験時間になったら、担当者の指示でテストルームに入ります。テストルームには、本、鞄、筆記具、携帯電話などはいっさい持ち込むことができないので、あらかじめ試験会場内のロッカーに預けておきます。
テストルームに入ったら、指定された席に着いてください。席にはノートボードとペンが用意されており、試験中にメモをとるときなどに使うことができます。コンピュータの画面には受験する試験が表示されています。監督官の指示に沿い、画面の指示に従って試験を始めてください。
試験の終了と採点
試験が終了すると、すぐに得点と合否が表示されます。試験が終了して退出するときには、ノートボードとペンは席に残していかなければなりません。試験結果のレポートは印刷されているので、受付で受け取ってください(試験会場により受け取り場所が異なることがあります)。
再受験(リテイク)ポリシー
不合格の場合は、再試験を受ける際のリテイクポリシーに注意してください。同一科目を受験する際、2回目の受験については、受験日の翌日から起算して7日目以降(土日含む)より可能となりますが、3回目以降の受験については、最後の受験日の翌日から起算して30日目以降より可能となります。
試験に合格したら
101試験と102試験の両方に合格すると、2〜3週間後に認定証が郵送されてきます。試験終了後、特に手続きをする必要はありません。
なお、LPI認定試験には有効期限がありません。一度合格すれば再試験を受ける必要はありませんが、最新の技術動向に対応できているかどうかの判断基準として、有意性の期限(5年)が定められています。認定日から5年以内に、同一レベルの認定を再取得もしくは上位レベルを取得することで、「ACTIVE」な認定ステータスを維持することができます。
試験問題の形式
択一問題の例
択一問題では、選択肢にラジオボタンが表示されます。正解と思われる選択肢を選んで、マウスでクリックします。
複数選択問題の例
複数選択問題では、選択肢にチェックボックス()が表示されます。正解と思われる選択肢をすべて選んで、マウスでクリックします。
試験では、解答すべき選択肢の数は問題に示されます。まれに数が示されない可能性もありますが、規定の数より多く選択しようとすると注意されるようです。
入力式問題の例
入力式問題では、解答欄にテキストボックスが表示されます。正解と思われるコマンドなどの文字列をキーボードから入力します。
解答がコマンドの場合、「絶対パスで」などの指定がなければコマンド名のみ入力します。オプションや引数については、問題の指示に従ってください。問題文に特に明記されていない場合はコマンド名のみの入力でよいでしょう。ファイル名の場合も同様に、絶対パスで入力するかファイル名のみ入力するか、問題の指示に従ってください。また、大文字と小文字は区別したほうがよいでしょう。
学習の進め方
本書を使っての学習
LPI認定試験に合格するには、実機を使った練習が不可欠です。とりわけ、UNIX系OSに馴染みのない方は、オプションや引数をそらで入力できるくらいにコマンド操作に習熟してください。何から始めたらよいかわからない場合は、一例として以下を参考にしてください。
- Linux操作環境を用意する(仮想マシンもしくは実際のLinuxマシン)
- 本書に書いてあるとおりにコマンドを入力し、その結果を確認する
- コマンド入力を少し変えてみる(実行例とは異なる引数を指定する、実行例が掲載されていないオプションを使ってみる、など)
- エラーが出たり思ったとおりの結果が出なければ、その原因を調べてみる
- manコマンドでマニュアルを読んでみる
- 本書を見ずに、コマンドを実行してみる(できるだけコマンド履歴を使わずに)
本書の演習に利用できる仮想マシンについては、VirtualBoxの上で動作するCentOSおよびUbuntuのイメージファイルを本書サポートページからダウンロードできます。Windowsパソコンしか所持していない場合でも、VirtualBoxをインストールし、イメージファイルを取得すれば、Linuxの実機学習ができます。
本書におけるコマンドの実行例は、CentOS 7およびUbuntu 18.04においての実行を確認していますが、特定の環境やデフォルトのインストール状態では実行できなかったり、ディストリビューションのバージョンや環境によって実行結果が異なる場合があります。また、わかりやすさを重視して、日本語環境での実行例を多用していますが、試験問題が日本語環境とは限りませんので注意してください。
試験には、非常に詳細で正確な知識を問う出題や、運用経験が役立つような実務的な出題もあります。確実に合格するためには、模擬試験問題を100%正答できるようになるよりもむしろ、本書の内容をすみずみまで理解するように努めてください。また、LPI認定試験では記述式(入力式)問題が比較的多いため、コマンド名やファイル名、オプションなどはできるだけ正確に暗記するようにしてください。
LPI日本支部のWebサイトには、101、102各試験の出題内容の詳細が掲載されています。重要なファイルや用語も掲載されているので、一度は目を通しておくことをおすすめします。
受験のテクニック
101試験と102試験の制限時間はどちらも90分、それぞれ約60問が出題されます。合格するには、おおよそ65%以上の正解率が必要です。中には、重箱の隅をつつくような問題が出てくることもあります。
問題は落ち着いて繰り返し読んでください。試験時間は十分にあるはずです。複数の選択肢を選ぶ問題では、必要な選択肢をすべて選び、漏れがないようにしてください。
問題によっては、完全な正解と思われる選択肢がなかったり、逆に複数あったりするかもしれません。そのような場合は、問題文をよく読んで設問の意図を推測し、そこからもっとも正解に近いと思える選択肢を選んでください。
問題はランダムな順に出題されます。そのため、ある問題の正解がわからなくても、その後の問題を解くことで正解がひらめく場合があります。そのようなときには、前にさかのぼって解答をやり直せるよう、問題にチェックを付けておくことができます。LPI認定試験では、解き終わった問題をやり直すことができます。自信のない問題にはチェックを付けておくと、後で素早く探し出せます。
問題に正答するには、正解の選択肢を見つけようとするだけではなく、誤っている選択肢を消去法で除いていくやり方が有効です。問題文や選択肢を注意深く読み、選択肢の誤りを探します。誤っている選択肢としては、次のようなものが考えられます。
- 存在しないコマンドやオプションが書かれている
- 明らかに問題文の状況とは関連しないことが書かれている
- 一見正しいが、設問の意図とはそぐわないことが書かれている
どうしても正解がわからない問題があっても、何か解答はすべきです。消去法を使って選択範囲を絞り込み、もっとも正解に近いと思える選択肢を選んでください。
ひととおり試験問題を解き終わったら、もう一度すべての問題を見直しましょう。問題文の意味を取り違えているなど、思わぬミスを発見することもあります。焦ることなく、丁寧に見直してください。
出題内容や受験の申し込み方法など試験の詳細については、LPI日本支部のWebサイトで最新の情報を確認してください。
いつでもネット模試も
翔泳社では本書『Linux教科書 LPICレベル1 Version5.0対応』の内容がどれくらい身についたかを試せるネット模試サービス「EXAMPRESS いつでもネット模試」を発売中。
実績ある著者が試験を分析して作成した問題と解説なので、試験勉強の総まとめや自分の力試しに利用してみてはいかがでしょうか。
※本模擬試験で出題される問題は本書からの抜粋です。内容は書籍に掲載されている模擬試験と同じものです。