本記事は『「技術書」の読書術 達人が教える選び方・読み方・情報発信&共有のコツとテクニック』の「1-2 世界が広がる!貪欲に本を求めれば、出会うはずがない本にも出会える(著:IPUSIRON)」から「悪書・良書を気にする必要はない」と「レベル感の合った本を選ぶ」を抜粋したものです。掲載にあたって編集しています。
良書を選び続けるのは不可能
読者の皆さんはどのような方法で読むべき本を選んでいるでしょうか。一般書は楽しむことが目的であり、好みの著者やジャンルで選ぶでしょう。一方、技術書は学習が目的であり、「習得したい技術が載っているか」、「自分が理解できる程度にわかりやすいか」などを考慮して選ぶでしょう。
別のアプローチとして、良書を優先的に選ぶという方法があります。本のジャンルにかかわらず、多くの読者に支持された本が良書と呼ばれます。読書においては一般に良書を選ぶのがよしとされます。そのためできる限り良書を選びたいと考えますが、実際にはうまくいきません。その理由として次の2つが挙げられます。
①一般に悪書・良書といわれている本が、あなたにとってもそうとは限らない
他人が悪書・良書と判断しても、あなたにそれが当てはまるとは断言できません。たとえば、感動した本を調べてみたら酷評されているというケースがあります。また、名著といわれている古典的な書籍に挑戦した結果、自分にとって内容が難しすぎて読み進められないこともあります。このように「良書=相性のよい本」が成り立たないことは多々あります。
②悪書との出会いを避けられない
この世にはとても数え切れないほどの技術書が存在します。Googleの調査によると、世界には約1億3,000万冊の本が存在すると推定されています。読書を続けていけば、あなたにとっての悪書(あるいは相性の悪い本)との出会いから逃れられません。多読であればなおさらです。
以上より、相性の悪い本と出会ったときにどう向き合うのかが重要といえます。
いまの自分に合わないと判断して、流し読みで通読したり、すぐ別の本に切り替えたりするのも1つの方法です。また、真っ向から挑戦するのもよいでしょう。どんな悪書であっても得られるものが少なくとも1つはあるはずです。
最も避けるべきことは読書そのものを止めてしまうことです。悪書を否定する暇はありません。いくら否定しても悪書はなくなりませんし、立場によって考え方が違うのです。そういったノイズを気にせずに読書を続け、本とうまく付き合うようにしてください。
マッチ度の見極めは大切だが、柔軟にとらえよう
一般に良書といわれている本であっても、自分のスキルや読書能力にマッチしていなければ、効果的に学習できません。技術書でたとえると、Linuxの基本的なコマンドを習得していなければ、カーネルの解説本を読んでも理解することは非常に困難です(効率が悪いといっても何かしら吸収できるものがあるので、その読書がまったくの無駄というわけではありません)。
技術の習得という観点でいえば、自分のスキルから見て少し難しい本であれば効果的に学習できます(あくまで、ここでは技術の習得という観点で述べています。すでに知っている内容の本であっても、読み方次第では有効活用できます)。たとえば「半分ぐらいは知らないが、読めばなんとかなりそう」、「2割ぐらいはすごく難しそう」といった印象を受ければ、ちょうどよいレベルといえるでしょう。
最初は順調であっても、途中から急に内容が難しくて理解できなくなることがたびたびあります。そういった場合は完全に理解することはやめ、最後までざっくりと目を通します。その後、つまずいた内容についてほかの本や資料で調べます。たいていの場合は、別の本でわかりやすく説明されていて、それをきっかけにして最初の本の内容も理解できるようになります。
もし10冊以上調べてもわからなければ、つまずいた内容を理解する以前に、基礎知識が足りていない可能性が高いといえます。1つずつわからないことを解消していき、基礎が足りなければそれを補強していけば、着実に実力はアップします。読書の効率ばかり追い求めて、読書を始めないというのは本末転倒です。「いますぐ読書すること」、「状況に応じて柔軟に切り替えること」を肝に銘じてください。
読書の名言
読書に関しては多くの偉人たちが名言を残しています。ここではその一部を紹介します。読書のやる気アップに活用してください。
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「本をよく読むことで自分を成長させていきなさい。本は著者がとても苦労して身につけたことを、たやすく手に入れさせてくれるのだ」
――ソクラテス(古代ギリシアの哲学者) -
「読もうとしない人は読めない人に劣る」
――マーク・トウェイン(アメリカの小説家) -
「よい本は私の人生におけるイベントである」
――スタンダール(フランスの小説家) -
「作家は本を始めるだけである。読者が本を終わらせる」
――サミュエル・ジョンソン(イギリスの文学者) -
「心にとっての読書は、身体にとっての運動と同じである」
――リチャード・スティール(アイルランドの作家) -
「あらゆる良書を読むことは、過去数世紀の最高の人々と会話するようなものだ」
――ルネ・デカルト(フランスの哲学者) -
「読書を廃す、これ自殺なり」
――国木田独歩(日本の小説家、詩人) -
「読書は、自分の頭ではなく他人の頭で考えるのと同じである」
――アルトゥル・ショーペンハウアー(ドイツの哲学者)