独立行政法人 情報処理推進機構のソフトウェア・エンジニアリング・センターは、ソフトウェアエンジニアリングの手法を適用することにより、高品質なソフトウェア開発の実現に取り組んできた。2005年、それを実証するために「プローブ情報プラットフォーム・ソフトウェア」開発のプロジェクトが計画された。これは、経済産業省の予算により、7つの企業が技術研究組合を組織して実施されたもので、タクシー、バス、トラックなどの営業車両の位置情報をもとに道路交通情報を生成し、リアルタイムな交通情報として活かす試みである。同時に、そのソフトウェア開発にソフトウェアエンジニアリングの手法を適用することが盛り込まれた。本書は、ソフトウェアエンジニアリングを実践するためのツールによって、ソースコード分析など、プロジェクト測定を行いながら開発を進めた記録である。開発するソフトウェアと開発手法の先進性をともに実現した例として、多くのソフトウェア開発者に参考となる記録である。
第1部 進行中のプロジェクト計測とフィードバック
1 先進ソフトウェア開発プロジェクトの概要
1.1 プロジェクトの概要
1.2 ソフトウェアプロジェクト構成の特徴
1.3 ソフトウェアエンジニアリング技術研究組合による開発のしくみ
2 プロジェクト計測計画の概要
2.1 主要な計測項目
2.2 計測データの収集法
3 全体の工程と主な計測・フィードバック契機
3.1 フェーズ1の工程区分と内容
3.2 主なプロジェクト計測・分析体制
3.3 フェーズ1のおもな計測契機
3.4 おもな分析とフィードバックの契機
3.5 フェーズ2の概要
3.6 公開デモ版開発の概要
4 データ収集・分析結果(フェーズ1を中心に)
4.1 基本設計、詳細設計のレビュー記録分析
4.2 EPMによるプロジェクト・モニタリング
4.3 ソースコード分析(コードクローン分析)
4.4 チェックシートによるリスク分析
5 より高度なデータ収集と分析(フェーズ2、公開デモ向け開発を中心に)
5.1 設計レビュー分析の高度化
5.2 EPM Pro*によるより高度な分析
5.3 開発フェーズをまたがるソースコード分析(コードクローン分析を中心に)
5.4 協調フィルタリングによる過去データを用いた工数予測
5.5 相関ルール分析
5.6 チームスキルと成果物品質との相関分析
第2部 実践された技術とその活用方法
1 プロジェクト状況をリアルタイムに把握する EPMツール
1.1 EPMツールでわかること
1.2 EPMツールの活用
1.3 EPMツールの活用例
2 ソースコードの類似部分を把握するコードクローン分析
2.1 コードクローン分析でわかること
2.2 コードクローン分析の活用
2.3 コードクローン分析活用例
3 類似データから値を推測する協調フィルタリング分析
3.1 協調フィルタリングでわかること
第3部 プロジェクトを支えた人々からのメッセージ
1 プロジェクトの概要
1.1 実践をめざしたソフトウェアエンジニアリングの研究開発で予想以上の成果を実現
1.2 「皆が使えるものを作るために『悪役』を買って出た」
1.3 EASEプロジェクトの成果をCOSEプロジェクトで実証
1.4 ソフトウェアエンジニアリングの適用と実用性のあるソフトウェア開発を共有したプロジェクト
1.5 鉱工業技術研究組合法に基づいた組織COSEのバックオフィスを支える
2 プローブ情報プラットフォームソフトウェアの開発
2.1 良質なデータ作りをめざして変動リンク方式に挑む
2.2 COSEプロジェクトにより、プローブ情報システムを実用化へと導く可能性を実感
3 ソフトウェアエンジニアリングの適用
3.1 フラットな組織、ブラックボックス化されたノウハウなど、困難なベンダープロジェクトを率いた立場から
3.2 COSEで得た知見をカーナビソフト開発に展開したい
3.3 1年目の分析結果を2年目に反映、品質向上活動に結びついた
3.4 COSEで採用した手法は中小規模プロジェクトにおいても選択肢の1つとなる
4 エンピリカルソフトウェアエンジニアリング
4.1 ソフトウェアの品質を高めるコードクローン分析ツールの開発
4.2 EASE協調フィルタリング法をSEC1000プロジェクトデータに適用
4.3 EPMをCOSEに適用、分析を担当して得られたもの
4.4 「プロジェクト見える化部会」として第三者の立場からプロジェクトをサポート
4.5 協調フィルタリングによって適切な結果を得るための糸口が見えてきた
対外発表と学術的な成果
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