上遠 恵子 著
レイチェル・カーソンとはどんな人だったのか? もの静かで、家族思いの、控え目な人だったが、茶目っ気もあり、ユーモアの人でもあった。 幼い頃から文章を書くのが得意で、自然観察も大好き。コピー機もファックスも、もちろんコンピュータもない時代に、膨大な情報を集め、やがてその細い指先から自然破壊を告発する言葉がつむぎ出された――そして完成した『沈黙の春』で環境問題に警鐘を鳴らしたレイチェル・カーソン。 その思想が、いま新たに見直されている。本書は、いまだに根強い人気を誇るレイチェル・カーソンの思想から生涯までをあまり知られていない側面に光を当て、当時の写真や彼女がつむいだ言葉とともに紐解いていく。 とくに、亡くなる半年前、1963年10月におこなった「環境の汚染」という講演は、彼女の遺言とも言うべき思いがあふれている。
「わたしたちが住む世界に汚染を持ちこむという、こうした問題の根底には道義的責任――自分の世代ばかりでなく、未来の世代に対しても責任を持つこと――についての問いがあります。当然ながら、わたしたちは今現在生きている人々の肉体的被害について考えます。ですが、まだ生まれていない世代にとっての脅威は、さらにはかりしれないほど大きいのです。彼らは現代のわたしたちが下す決断にまったく意見をさしはさめないのですから、わたしたちに課せられた責任はきわめて重大です」
東日本大震災、福島第一原発事故の後、読者が増えてきているのは、何を物語っているのだろう。
上遠恵子(かみとお・けいこ)
東京都出身、東京薬科大学卒業、研究室勤務、学会誌編集者を経て、現在はエッセイスト。レイチェル・カーソンの著書の『潮風の下で』(岩波書店)『海辺』( 平凡社)『センス・オブ・ワンダー』(新潮社)のほか、伝記の翻訳など多数。著書に『レイチェル・カーソンの世界へ』(かもがわブックス)など。1988年に「レイチェル・カーソン日本協会」設立に加わる。現在会長。執筆、講演などで活躍中。
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ハンバーグ さん
2020-03-30
レイチェルカーソンの翻訳の方が本人が残した言葉から今の時代について書かれた本。 幼い頃から科学と本が好きでその事から大人になり、自然の科学の本残した人という事、そして自然の中で生きている事、戦争で使われた農薬がとても危険だと訴え続けた人だと分かりました。 『知る」事よりも「感じる」事で新たな発見があり、学びになる。 自然の出来事に対して気持ちの余裕を持ってをあるがままに感じる事が出来たらいいなと思いました。
yyrn さん
2014-08-30
50年前に書かれた『沈黙の春』は農薬などの化学物質による生態系への取り返しのつかない被害を警告した本だ。今でも読み継がれている名著と言われているが、うるさ型のおばさんが正義を振りかざしてヒステリックに告発した本かなと思い、これまで読まずに来たが大きな間違いであることをこの本は教えてくれた。子供時代から自然に親しみ、大学では生物を学び、魚類野生生物局に職を得て、さらに自然に対する造形を深め、自然の素晴らしさを文章にして人気を博したが、その自然を守るために科学万能の世に警鐘を鳴らしたのが『沈黙の春』だった。
nizimasu さん
2014-08-21
不勉強なもので化学物質による人体の被害を告発した「沈黙の春」について改めて考えが及んだのが最近のこと。いまでも公害の告発書としても意義のある本の著者の足跡をたどったのが、翻訳者がまとめた評伝。前にドキュメンタリーで見たレイチェルの自宅周辺の景色に思いを馳せながら、告発した内容は当時のアメリカの政府を告発しただけにすごく勇気のいること。そんなことを綿密な取材と幼少時からの文章への親しみを綴った内容は今でも色あせない。こういう人が、普通の市井から出てくるアメリカの可能性はすごい。しかも日本の核がきっかけとは