本書は、「ゼロ知識証明」をビジネスに活用するための実践書である。
情報化社会の進展により、多くの情報が電子データとして保存され、
データの活用により新しい価値が生まれるようになった。
その一方、企業によって個人情報が本人の意図しない方法で使われるという
プライバシーの懸念があり、欧州におけるEU一般データ保護規則(GDPR)や、
わが国における個人情報保護法などにより、個人情報が法的に保護され、
企業はその活用に関して規制を受けている。
これらを調整し、プライバシーを保護しながらデータ活用を行う技術は
「プライバシー強化技術」と総称され、機密性が高い情報を扱う業界での
活用に向けて研究が進められている。
「ゼロ知識証明」は、証明したい情報を明かすことなく、その情報に関する
事項を証明することができる技術であり、プライバシー強化技術の1つとして
紹介されることがある。しかし、ゼロ知識証明は、プライバシーの保護以外にも、
コンピュータが行った計算を高速に検算し、コンピュータの計算の信頼性を
確保することなどにも利用できる。
本書は、ゼロ知識証明はもとより、暗号理論やシステム開発についても
全く知らない方を対象にした入門書である。ゼロ知識証明は暗号理論を用いるため、
その内容をすべて理解するには暗号理論の理解が必要であるが、可能な限り
数式を使用せず、具体例や図表を用いることにより、ゼロ知識証明や暗号理論を
知らなくてもゼロ知識証明のイメージを理解できるように記載している。
本書はゼロ知識証明の理論、ビジネスへの応用、アプリケーションの実装までを
一通りカバーしている。本書を読むことで現実にある問題に対してゼロ知識証明の
適用により問題が解決できるか検討を行い、それが有効な場合にはアプリケーションの
実装へ一歩を踏み出すことが可能になる。
「ゼロ知識証明」とは、ある人が特定の事柄を証明したいときに、機密情報を明かさずに証明する技術の総称。次世代のプライバシー強化技術として注目されている技術である。その概要と国内での取り組みを紹介する初めての書籍『ゼロ知識証明入門』(翔泳社)が、デロイトトーマツのコンサルタントによる書き下ろしで出版された。本連載は、本書の内容を一部抜粋で連続で紹介する。今回は第一回目で、情報セキュリティのために必要なプライバシー強化技術の全体像を解説する。 https://enterprisezine.jp/article/detail/13434
第1章 情報化社会とプライバシー
1-1 データ活用の可能性とリスク
1-2 プライバシー強化技術
1-3 ブロックチェーンとゼロ知識証明
第2章 ゼロ知識証明技術の基礎知識
2-1 暗号化・復号
2-2 共通鍵暗号
2-3 公開鍵暗号
2-4 ハッシュ関数
2-5 デジタル署名
2-6 認証局
2-7 暗号通信プロトコルSSL/TLS
2-8 ID、パスワードによる認証
第3章 ゼロ知識証明
3-1 ゼロ知識証明の特性の直感的な理解
3-2 ゼロ知識証明ではない知識の証明
3-3 ゼロ知識証明の例(シュノアプロトコル)
3-4 ゼロ知識証明のモデルと特性
3-5 ゼロ知識証明の主な実現手法
3-6 ゼロ知識証明のメリット
第4章 ビジネスへの応用
4-1 ユーザー認証
4-2 顧客審査①:年齢確認、所得証明
4-3 顧客審査②:信用スコア
4-4 外注した秘密計算の検算
4-5 匿名性暗号資産
4-6 ビジネスプロセスの効率化
第5章 アプリケーション開発の基礎知識
5-1 ゼロ知識証明アプリケーションの全体像
5-2 zk-SNARKのチュートリアル
5-3 ライブラリ
5-4 ゼロ知識証明に関する情報源
第6章 ゼロ知識証明の現状と未来
6-1 ゼロ知識証明の実用化に向けた課題
6-2 ゼロ知識証明の将来
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