Robert S. Desowitz 著
藤田 紘一郎 監修
古草 秀子 翻訳
古草 秀子 原著
コロンブスが新大陸発見の航海から帰港した1493年、ヨーロッパは未知の病に襲われた。局部から全身に広がるじくじくした発疹。やがて視力が失われ、発狂して死にいたる・・・。15世紀末のヨーロッパに突如出現した「梅毒」は、コロンブスの一行がバハマ諸島の女たちと情熱的な夜を過ごして感染し、旧大陸に持ち帰ったとされる風土病と関連があるようだ・・・。
梅毒、ペスト、天然痘、黄熱病、鉤虫症、マラリア、そして近年出現した新種の感染症が、国際的な人の流れに乗って伝播するダイナミズムを物語性豊かに描いたメディカル・ノンフィクション。
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タミイ さん
2016-03-22
サンタマリア号の船員がバハマで現地の女にもらった梅毒が15c欧州での大流行の始まりだとか。だが本書の主題はむしろ著者の専門分野、熱帯病と人類の闘いの歴史だ。マラリア、黄熱等の感染症は熱帯に限らず人や動物・昆虫の移動と接触で世界中に伝播する。複雑に絡み合う疫学的構造が崩れ未知の感染症が自然界からヒトへ飛び火する。地球温暖化で昆虫媒介感染症は増大、補助金不足で薬剤開発も後回し状態。全ての科学は奨励されなければ人類に健康と安寧をもたらすことなく衰退するという一文が胸に響く。知識の集約のみが科学を進歩させるのだ。
ユーディット さん
2016-03-29
私の本棚に「医学」というようなカテゴリーを設けていないので「歴史」に入れた。寄生虫などの専門家が記述した病原体から証明される人類の歴史。本格的な内容で一般人には馴染みのない菌などの名前と頻繁に出くわすが、歴史部分と結論を拾い読みすれば誰にも非常に興味深い良書。侵略と奴隷貿易の恐ろしさが如実に伝わり、戦争を真面目に考えるべき現在多くの人に読まれるべき本。縄文人が南米に漂着して病気を持っていった話、1950年代まで日本は寄生虫天国だったことなど日本も活躍する(?)
soyokaze さん
2013-05-16
「コロンブスが持ち帰った病気」と言えば梅毒。梅毒は性道徳が乱れていた当時の欧州で猛烈な勢いで広がり,仏国王・モスクワ大公国皇帝さえも罹患しました。が本書で梅毒に触れられているのはその一章のみ。作者は熱帯伝染病の大家で,いかにして人類が黄熱病やマラリア等の伝染病を克服したかが本書のテーマです。その意味では書名は正しく内容を表していません。「ウィルス」という病気の源は発見されたものの,なぜ人と人の間をウィルスが移動するのかは長い間謎でした。蚊が「運び屋」だということが明らかになるくだりはとてもスリリング。