保育士国家資格について、ご存じでしょうか? 取得するには2つの方法があります。(1)養成校を卒業して取得するルート、(2)独学で国家試験をパスして取得するルート、です。
弊社が刊行しているのは、(2)の独学で取得するための試験対策本になります。試験科目は9科目。合格率は10%。独学受験はかなりの難関です。
問われる内容は、例えば発達過程の知識を問う問題の場合、「“歩く、押す、つまむ、めくるなど様々な運動機能の発達や新しい行動の獲得により、環境に働きかける意欲を一層高める”のは、6カ月~1歳3カ月未満の発達課程である。」○か×か、といったもの。
答えは、「×」になります。解法のポイントとしては、つまんだりめくったりできるようになるのはもっと後のことだから。6カ月~1歳頃ではなく、1歳3カ月~2歳くらいでできるようになることだからです。
保育士本の打合せで、「子どものこういった当たり前のこと、最近の学生さんはわからないのよねー」っと著者の先生がおっしゃいます。「いえいえいえいえ!最近の学生さんじゃなくてもわかりませんから~!」っと私。
かくいう私は、この本を企画する直前に出産したところでした。「先生、私だってまったく知りませんでしたよ。いつ頸が座って、いつ立って、いつご飯を食べるようになるのかだって、産んで毎日お世話をするようになるまでまったく、何も知りませんでした」
それこそ、最初はオムツの付け方さえ不明……。産んだ次の日は、とんだお猿さんを産んでしまった、山に返しに行こう、とまで半分本気で思いましたから。
子どもは、突発性発疹の高熱にはじまって、ノロだ、ロタだ、水疱瘡だ、おたふく風邪だ、プール熱だと、いろいろな病気をもらってきます。「なんでよりによって今?!」「この繁忙期が終わってからにしてよぉー」なんてことも、まぁあります。
ロタウィルスにかかった時の、夜中の吐瀉の勢いは凄いです。助走をつけたマー・ライオンのよう。上に向かって思いっきり吐くんですね、それを全身でキャッチ。吐瀉物も素手で受けますし、うんち!、おしっこ!、という単語も、こんなに毎日、口にしたことはありませんでした。
仕事のバッグと保育園の布団バックと着替え袋を背中と肩にしょって子どもを抱きかかえ、シャッターが降りる寸前の病院まで走り続けるなんてことも、まぁ、あります。地味ぃにやり場のない思いを抱え……。
子どもを産んで一番思うのは、知識と経験はまったく違うということです。頭ではわかっていたような気がすることも、体験してみるとまったく違いました。ほぼすべてにおいて、そうでした。
そして、私のまだまだ少ない子育て経験の中で最も大きかった経験は、なんといっても保育園と保育士さんに出会ったこと。最初は保育園に対して、信用してよいのかどうか、半信半疑なところもありました(今だから言えます)。
しかし、その疑念はあっという間に吹き飛びました。保育士さんのプロフェッショナルな振る舞いに朝晩接する中で、「ここにさえ預けていれば大丈夫」という安心感に変わったのです。
保育士さんは本当にすごい。育児のプロです。早朝7時から、ハイテンションの挨拶に始まり、一人一人の情報の把握、機転のきかせ方、とっさの対応、いざという時のテクニック、幼児クラスでは幼児たちの羨望の的、憧れの人にまでなってしまいます。
人相手の仕事で、ここまで高いスキルを求められる仕事はほかにないのではないでしょうか。対人・コミュニケーション力も素晴らしいです。人間力が高い、っていうのかな。
今や女性の社会進出は止められない、という一方で、働く女性の半分以上が、まだまだ出産を機に仕事を辞めてしまうそうです。ママさんたちに貴重な労働力として社会に出てもらわないと国の経済が成り立たないという今、保育の施策は進んでいます。そしてこれからますます進むようです。保育士さんの活躍の場はどんどん広がっています。
これから保育士を目指される学生さん、子育ては任せてよ、というママさん、子ども関係の仕事がしたいなぁと考えているOLさん、保育士資格を受験するときは、『保育士完全合格テキスト上・下』をチラっとでもご覧いただけると、とても幸いに思います(子育て中お母さん編集者の汗と涙の経験も生きているはず……(?)と思います)。
あおた