仕事を終えてMarkeZineを眺めていたら、求人記事が公開されていました。「翔泳社の本のマーケティングを推進する新部署を立ち上げるにあたり、販促記事を書ける人を募集している」と。その頃、僕はもっと仕事をしたいと思っていました。当時の仕事であるネット番組台本の制作やイベントレポートの執筆だけでは物足りなかったからです。
しかし、マーケティング。未知の分野で経験もありません。にもかかわらず、僕は面接でとにかく早く多く記事を書けることと忍耐力をアピールしました。そして応募から2週間くらいで入社が決まりました。
もちろんマーケティングという仕事に興味はありました。それはなぜ人がものを買うのか、「これ」ではなく「それ」を買うのかを突き詰める仕事です。いったいどんな要因がものを買うという行為を決定づけるのか。どうすれば「それ」ではなく「これ」を買ってもらえるのか。人間の心理を理解し、ビジネスに繋げる仕事が面白くないわけがありません。
僕が当時所属することになったマーケティング広報課は、僕の入社と同時に作られました。もちろん当時の社内にノウハウはまだほとんどなく、少しずつ知見を蓄積していく必要がありました。相応の経験値が溜まってきたいまも、それは変わりません。翔泳社が扱う商品(本、メディア、イベント、セミナー、その他諸々)を、さまざまな方法で世の中に広く知らしめ、必要とする人へ届けることが、マーケティングの大きな目的です。
例えば、マーケティングに関する本が刊行される。それなら、MarkeZineの会員に向けて新刊の告知メルマガを配信しよう。刊行したことを知らせるニュースを公開しよう。著者に取材し、本の魅力や読みどころを語ってもらおう。あるいはイベントを開催しよう。他社メディアにプレスリリースを出そう、取材してもらおう。このように、あらゆる手段を駆使しなければなりません。
翔泳社ではマーケティングのシステム作りが進んでいます。2019年にはより包括的なマーケティング部ができ、人数とともにできることが増えました。SNSや広告、データ分析も重要な選択肢になり、書籍編集部やメディア編集部、営業部との連携も深まっています。
もしかしたら、人によっては出版社に対して堅実さや歴史があるといったイメージとともに、ネガティブなイメージもあるかもしれません。古臭い、融通が利かない、上下関係が強い、毎日残業、有給休暇も取れない、などなど。こうしたイメージは社会的にも悪いことだと認識され、少しずつ改善されてきていますが、翔泳社では以前から柔軟性が重視されてきました。
リモートワークを始め、どんどん新しいシステムや技術が取り入れられています。仕事のやり方で凝り固まった作法なんてありません。上司と部下という関係性はもちろんありますが、それはあくまで仕事における権限の違いです。残業しなければならないほど仕事があれば上司に相談でき、対応してもらえます。有給休暇も希望が叶わなかったことはなく、自分の責任で取得できます。また、仕事をするうえで最大限のサポートをしてもらえますし、無理難題を投げつけられることはまずありません。
自分自身をきちんと管理し、責任を持って仕事ができる人にとって、かなり理想的な職場に近いのではないでしょうか。
(2021年2月更新)(2016年3月掲載)