― 編集者になろうと思ったきっかけについて教えてください。
大学卒業後は2年間、銀行で窓口業務を担当していました。しかし、働いているうちに、私はこの場所でずっと仕事をしていくことがベストなのだろうかと悩みました。
このままではいけないと感じ、次に勤めたのは、IT系のベンチャー企業。サイト制作やSEOなどのディレクションを経験しました。とてもやりがいのある仕事でしたが、今度は教育に携わる仕事がしたいと、クリエイターを育成するための教育機関に転職しました。
そこでは営業を担当し、異業種への挑戦を考えている方たちの背中を後押ししていたのですが、ふと「人の背中を押しているばかりでいいのか」「私も本当に好きな世界に飛び込んだほうがいいのではないか」と。27歳のときでした。
私がこれまでの仕事や人生経験のなかで、飽きずにできたことが文章を「考え」「書く」こと。メルマガを書いたり、ブログを書いたりするのが好きでした。そこで、次はライターを目指そうと、色々と調べていたのですが、「ライターになるにはまず編集の仕事を経験したほうが良い」という記事を見つけたんです。そこで、とにかく書くことに携わりたいと、編集者になることを決意しました。未経験可かつ、私が興味のあったIT分野に強い出版社ということで、翔泳社に応募しました。
― 翔泳社は、エンジニア向け、マーケター向け、事業開発者向けなど、さまざまなWebメディアがありますが、最初はEC事業者向けの「ECzine」に配属となった中村さん。ECに関する知識はお持ちだったんですか?
まるでありませんでした。私自身、ECはただの利用者という感じで(笑)。そもそもEC=オンラインショップということも、よく分かっていなかったんです。そんな中で業界知識はもちろん編集のスキルは、日々の取材や、記事作りを通して学んでいきました。机に向かってカリカリと勉強するというよりは、ひたすら実践。入社して一、二週間後には上司の取材に同席し、原稿を書く機会に恵まれました。
翔泳社のどのメディアでもそうですが、まずはどんなこともやってみて、覚えるDCPA型=Do(実行)→Check(反省)→Plan(計画)→Action(行動改善)のサイクルで、編集者としての基礎を築いていく体制、周囲の方々のサポートがあります。なので、経験の有無はさほど重要ではないと思っています。
― その後、入社から約一年でクリエイター向けのWebメディア「CreatorZine」を立ち上げられましたが、その経緯について教えてください。
「こういうメディアがあったら良いと思うんだけど、やってみる?」企画のタネは上司からの一言でした。当時、メディアを立ち上げたいと明確に考えたことはありませんでしたが、もし私がやるのであれば、前職で経験してきたクリエイティブな分野が良いだろうなと。
それからはどんなコンテンツを載せるか、どのように収益を得られるようにするかなど、必死で考えました。社内の企画会議も、決死の覚悟をして臨んだのですが、社長からは「いいね!やってみよう」のひと言で(笑)。
翔泳社では、私以外にも、20代の編集者が「SalesZine」という新規メディアを立ち上げたり、それぞれの編集者が興味のある分野の企画を打ち立てています。挑戦できる環境があることはありがたいことだなと思います。
― どんな人が翔泳社に向いていると思いますか? また、中村さんが仕事をする上で大事にしていることはなんですか?
裁量が大きいことにやりがいや楽しさを感じられる人だと思います。翔泳社は与えられる仕事よりも、自ら考えて動くことが求められる仕事が多いです。その分大変なこともありますが、若いうちから自分のやりたいことを実現できる会社はそうないのではないでしょうか。
大事にしていることは、いつでも素直であること。私自身が、知識・経験がある、頭の回転が早い、仕事ができるといったタイプではないと感じるからこそ、大事にしたいと思っています。知らないこと、分からないことに出会ったときに、すぐに教えを乞う、ミスをしてしまったときにすぐに「ごめんなさい」と言える素直さがあれば、どんなことも成し遂げられると思います。
(2020年9月掲載)
インタビュアー&執筆:メディア編集部/ 撮影:市川 証